「!こっちこっち!」
「誠二!・・・あれ?センパイ?確か・・・」
「俺は」
「木田さんでしたよね?」
には、と笑顔を見せてが言った。
「あ・・・あぁ。すごいな。さっきの自己紹介で覚えたのか?」
「はい!16,7人くらいならすぐに覚わりますよ」
木田先輩の言葉に、ちょっとくすぐったくなって私は控えめに笑った。
自己紹介そのものはすぐに終わって、その後は交流の時間に使っていいって渋沢寮長が言ってくれたので、
あたしと誠二、それにタクと遥青は木田先輩が得意だって言うコーヒーを入れてもらうことになった。
コーヒーは苦いから苦手なんだけどな、と思いつつ差し出されたコーヒーを見た。
・・・あれ?この色。
「えーと・・・木田先輩?」
「苦いのは苦手そうだったからな。君と藤代のはカフェオレにしてあるよ。」
「タクと遥青ちゃんは普通の?」
「こっちの組は普通のが好きそうだったからな。」
「ありがとうございます。」
「いい香りですね。」
やっぱり普通のコーヒーじゃなかったか。・・・木田先輩って優しいなぁ。
そう、言われたとおりあたしはコーヒーは苦くて飲めない。
苦手、って言うか飲めない。だからこの心遣いは正直嬉しい。
入れてもらったのはアイスコーヒーなのにじんわりと心があったかくなっていくような。
「おいしいっ」
「それはよかった。」
ニッコリと笑った木田先輩の顔は渋沢先輩に負けず劣らず『お父さん』を思い出させるものだった。
グリフィンドールの寮の人たちは皆結構バラバラ。でも和やか。
なんて表したらいいのかはわかんないけど、でも楽しい。
たちはテーブルでコーヒーを飲みつつ会話をしていた。
ふと思った事を口に出すとそこから会話が始まる。
何かキッカケさえあれば会話は始まるようで、水が湧き出てくるみたいに言葉が溢れて止まらない。
それくらい、楽しい。
「明日って何するんだろ?」
「明日は買い物だと思いますけど?」
「何で分かるの?遥青。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・勘?」
「その間が怪しいよ遥青ちゃん!」
「誠二はいちいち煩いよ。」
「ごっ、ごめんタク!」
耳元で騒ぐ藤代を自身の猫目でじとっと睨みつけて笠井は溜息をついた。
謝りはするものの次の時には何もなおってはいない。
こんなのはもう慣れたことだ。
だが笠井は思う。
(もう少し落ち着いてくれれば俺も楽でいいのに。)
と。
「買い物かぁ〜、となるとさ、教科書とか買うの?」
「そうですね、あとは・・・杖、とかですか。」
「そうだね、絶対買わなくちゃいけないのはその2つ。あとは自由のはずだけど」
「ホント?タク!あ、なぁなぁ、明日このメンバーで周ろうぜっ」
「いいの?」
「いいんですか?」
「・・・・・・誠二と?」
「もっちろん!って・・・何タク。嫌そうな声だして。」
笠井は再び軽く溜息をつくと閉じた目を開いてニッコリと笑顔を藤代に向けた。
その顔を直視した藤代がメデューサに睨まれた人間のように、
(蛇に睨まれたかえるのように)固まる。
それを見たの笑顔も凍った。
「嫌そうじゃない。嫌なんだよ。」
「たっ、タク・・・」
「誠二と行ったら絶対何か起こるだろ?トラブルメーカーだもんな。」
「うっ、うう・・・」
「ま、まぁいいじゃん?多少のトラブルはあった方が!ねっ遥青。」
「そうですね、さん。その方が面白いんじゃないですか?」
冷や汗を垂らしつつが言うと遥青はそれに静かに笑って答えた。
人がいる前では「さん」がつくのだなとは納得し、笠井を見る。
「・・・仕方ないな・・・」
「やった!タク!」
「ただし。迷惑かけるなよ?かけたら1週間は口聞かないから。」
「うっ・・・」
2人の言い合いをあたしは椅子に座りながら見ていた。
ふと遥青がその席を立つ。
それに気がついたあたしは後ろから声をかけた。
「遥青。どうしたの?」
「時間・・・そろそろでしょう?コーヒーカップを片付けようかと思いまして。」
「あ、そっか!じゃみんなの集めてくるね!」
「じゃあ洗ってます。そっちはお願いしますね。」
「まかせてー」
談話室は広い。
木田さんが煎れたコーヒーのカップを集めるだけならまだしも水を飲んでる人やらなにやらもいる。
それを全部回収する義理は無いのだが・・・してしまう性格なのがなのだ。
「渋沢さん回収しますね」
「あぁ、悪いなさん。俺もやろう。」
「え?あー・・・すいませんお願いできますか?」
「なんだ?もうそんな時間か?」
「俺も持っていこう、さん、ここはいいから同学年と所行ってくれるか?」
「わかりました!・・・えー・・・と谷口先輩と内藤先輩、と城光先輩ですね!よろしくお願いします!」
呼ばれた3人はポカンとして彼女が向かった先を見た。
それを見て楽しそうに木田が笑う。
珍しいなと自分で思いながらも3人の驚きようがあまりにも面白かったのだから仕方ないとも思う。
「彼女、記憶力が良いみたいだぞ」
それもそうだろう。たった一度の自己紹介でここにいるだけの人数でも覚えてしまったのだから。
この調子ではこの寮のメンバー全員覚えてしまったのではないだろうか?
一方回収していくは将のところでコップを落としそうになり小堤に半分持ってもらっていた。
「ごめん・・・」
「いや、こっちこそ人にやってもらってばかりなんていけないと思うから!」
「・・・」
「それに割ったら失敗かもしれないけどコップ割る前なら失敗にはならないさ」
「そだね。失敗する前にフォローしてもらったと思えば安いもんか!」
「いや、安いかどうかは知らないけど・・・」
右手に重ねたコップは3つ左手にも3つ。
小堤君がコップを持ってくれてるけどこれがまた・・・
バランス悪いなぁーとか思ってるんだろうな小堤君・・・。
(その前にそういうのは安いとかどうとか言うようなものじゃないんじゃ?)
が気にしている事とは全く別の事を小堤は危惧しているのだがそんな事をは知る吉もない。
「よし!さん、小堤、ありがとう。あとは俺がやっておくから先に部屋に行っていてくれ。
もう時間だしな、俺ならごまかせるから。」
「え、でも悪いですよ」
「大丈夫だよ、渋沢先輩はそういうところはしっかりしてるから。」
「タク・・・うん。わかった。じゃあお願いしますね!」
「あぁ、おやすみ。」
「「「「「おやすみなさい」」」」」
階段を上がっていくを見て、竹巳が足をとめた。
誠二がそれに気がついて振り返る。
「どうしたの?タク。」
「あ、いや・・・何でもないよ。強いて言うなら明日買い物だと決まったわけでもないのに、
何で俺は誠二と周る約束をしたんだろうという事かな。」
「えぇ!?」
「だから煩いって・・・。」
隣で誠二が騒いでいるのを聞きながら、俺は部屋へ入る。
それに誠二も続いて・・・そうか。部屋も同じだったっけ・・・。
仕方無しにベッドに腰掛けて、他の同室の2人に挨拶をして俺は寝にはいった。
誠二とタクと別れてあたしは有希と階段を上った。
有希と部屋が同じで、少し離れた部屋には遥青と紅留先輩。
部屋もばっちり覚えたし!こういうところの記憶力だけはいいんだよね。
「ちゃん、有希。おやすみ」
「おやすみなさい」
「オヤスミ遥青!紅留先輩!」
「先輩も遥青もオヤスミ。」
2人と分かれてと有希は部屋の鍵をあけた。
部屋着に着替えると2段ベッドの上下に分かれて寝る。ちなみにが上だ。
横になりながらは浮かれた様子で下の段の有希に話し掛けた。
「有希起きてるー・・・?」
「何?、起きてるよ」
「あたし、ここにくる事が出来てよかったデス。」
「何いきなり。」
「だってそう思ったんだしさー」
「まだ早いわよ。明日からもっと面白い事が起きるんだからさ。早く寝ないと明日困るわよ〜」
「はぁい。オヤスミ、お母さん。」
「誰がよ」
クスクスと少し笑って、有希が呟いた。
「おやすみ、」
「うん、おやすみ・・・」
まだその先にあるものが何かは知らないけれど。
今までの自分をちょっと変えてさ、いろんなことに挑んでみようと思ったんだよね。
全部のきっかけをくれたのはあの白い鳥だったんだから。
それに少し、掛けてみようと思ったんだ。
あたしはどうやって生きていけばいいのか。
自分がここに存在する意味が分からないから、何か見つけようと思ったんだ。
どこまでも、自分の足で歩いて、走って。
そんでなによりも楽しんで、ね。
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