誠二をからかう事に飽きたのか、さっきまで話していたメンバーはそれぞれ別の事を話し出していた。
は目の前の料理を食べながらキョロ、と辺りを見渡した。
そして目的の人物を見つけるとその元へと席を移動した。
「将!」
「あ、。あそこにいるフクロウはの?」
「う?あー・・・学校のだよ。手紙を運んで道案内もしてくれたフクロウなんだ。名前はブラン。」
「真っ白で綺麗なフクロウだね」
ちらりとシャンデリアで羽を休めている純白のフクロウを見ては苦笑いを浮かべる。
風祭の隣にいる水野に目をやって、は少し話題をずらした。
「ねぇ、将の隣の人、ダレ?」
「水野君だよ。さっき話してなかったっけ・・・?」
言いながら、将は気付かれない程度に首を傾げた。
何かおかしい事でも聞いただろうか?あの話のずらしようは少し強引なところがある。
何かあった、と言うのは顔にバッチリでているのだがそれでも隠そうとしているのだから無理に聞かない方がいい。
将はそう思い、そのまま水野の紹介をしようと水野に声をかける。
「水野君」
「何だよ風祭」
って言うか。何で皆知り合いなの?
将とこの水野君とやらは知り合いみたいだし、タクと誠二も紅留さんと知り合いらしいし。
まさか、とは思うけど・・・知り合いいないのってあたしだけ?
なんか仲間はずれっぽくて、ちょっと寂しい。
「そんなことないよ!僕は偶然クィディッチの説明会であった事があっただけだし・・・」
「俺は小島とは学校が同じだったから」
「私は水野とはそうだけどカザや紅留さん達とは説明会ね。」
「俺と誠二は渋沢先輩たちとは学校が同じだったから」
「って言うかーなんでいきなりそんな事聞くの?」
「だって!なんかあたしだけ仲間ハズレみたいじゃん!」
「・・・・・・・は?」
ぷ、と誠二が噴出した。
「あは、あははっ、ははっ・・・!何だよ、そんな事考えてたのかよー!?」
「なっ、何がおかしいの?だってみんなの名前全然知らないんだよ?何か、ほら、ねぇ?」
「なぁに言ってんだよここに入った時点でもう俺ら仲間じゃん」
何時の間にか再結成した先ほどのメンバーはの周りで料理を頬張っていた。
沈んだ顔をしていたに有希が何事かと問うと、は素直に言った。
『なんか仲間はずれみたいだからさ』と、正直に。
それに対しての答えは誠二がサラリと言ってのけた。
あまりにも単純で、簡単で、嬉しい言葉を。
「へ・・・」
「そうだよ」
「仲間はずれなんてあるわけ無いじゃない」
「同じ寮に入ったんだ、これから覚えていけばいいだろ?」
はへへ、と口元に笑みを浮かべた。
「うん・・・ありがとっ!」
「照れてるー」
「照れてないっ!」
「顔赤いよー?」
和やかなムードになってすぐ、紅留が寮長渋沢に呼ばれて席をはずした。
それでも会話が止まないこのメンバーの中心。
彼女が不意にテーブルの奥へ目をやった。
他の、落ち着いて会話をしている2年生ではなく、同学年の1年生に。
「あれ、ちょっとそんなトコ居ないでこっちおいでよー!」
「え?や、え?でも・・・・・・・」
「名前、何て言うの?」
「いきなりそれは失礼だよ!」
「無理矢理だー!」
「こ、小堤デス・・・」
「勢いに負けるな小堤ー!」
「小岩くん、タッキーこっち来なよ・・・」
「なんかここの寮みんな個性的だね、小岩君だっけ?髪の色独創的!」
「そこなの!?個性的ってそこなの!」
それからもわいわいと話を続けるその中で誰にも話し掛けられない哀れな人物が居た。
「あれ?ねぇねぇ、あれはダレ?同学年だよね?あの人も独創的・・・」
「だから・・全部髪の色で決めてない?」
「あれは鳴海だね」
「鳴海?ふーん、鳴海とやら!来ればいいじゃん!」
来ればいいじゃん、ってそんなどうでもいいような言い方。
席をともにしている誰もがそう思ったがそれを口に出すのは一人しか居なかった。
「。そんな適当な言いかたしたら鳴海が拗ねるって」
「誠二。十分失礼だと思うよ。」
にはっ、と何の悪気も無しにそう言う誠二に、竹巳は溜息をついた。
しかし、その会話の主が口を開こうとする前にその会話は終わってしまう。
「あ、誠二。三上先輩来てるね。」
「げ、マジ!?タク、隠して隠して!」
「・・・・・なんで」
「隠れる必要あるの?誠二。」
「も隠れるんだ!狙われたら危ないから!」
「すごい顔になってますよ誠二くん・・・」
「遥青ちゃんも隠れて隠れて!」
「はいはい。さ、さんも隠れて。」
「はーいっ」
ひょこひょこと机の下に隠れる。
クスクスと笑いながら3人でその三上先輩の話をする。
どんな人なのかと聞けば誠二からは『プリン大好きで暴力が好きで紅留先輩の彼氏のたれ目の人』で、
遥青に聞けば『紅留さんの彼氏でナイーブで面白いたれ目の人』で・・・
結論は『紅留さんの彼氏でタレ目の人』に決定。
その会話を聞いている机の上の人たちの笑い声も聞こえる。
でもそれでいいんでしょ!?と遥青に聞くと、遥青はその長い髪を揺らして必死で頷いていた。
誠二は声を抑えきれないようで爆笑している。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・笑いすぎだよ誠二。
と、噂の三上先輩がこっちを向いた。
「藤代くん見つかるよ?」
「やべっ」
「っていうか遥青は見えてるよ」
「あらそうですか?有希」
「ぎゃー遥青ちゃんちゃんと隠れて!」
「だから誠二、せっかくの忠告を無視しない。」
見つかるって・・・それは面白いかも!と思ったのも束の間、前のほうで先生が声を張り上げた。
「ではそろそろお開きにしましょうか!」
タイミング悪いなぁ、とは机の下からひょっこりと顔を出してぶーたれる。
戻ってきた紅留さんの顔を見てへにゃんと笑顔を見せると、紅留さんも薄く笑った。
だけどその顔はどこか・・・苦笑にも見えて、なんだか変な感じだった。
「やっぱり、だめでしたか・・・」
赤い液体が入ったグラスを揺らして言う遥青に誠二が声をかける。
その顔はこの寮で話しているときとは違う、無表情の笑み。
その顔がくるりと変わった。
「何が?」
「何でもないですよ?」
「そっか!それでさ、ー」
「それ面白いっ!で?その後どうしたの?」
「お開きにしようって言ってるんだから静かにしなよ2人とも。」
タクが呆れた顔をして私たちに言う。
そんなに疲れた顔をしなくてもいいのに、と思いつつも前を向いて先生の話を聞く。
今話している西園寺先生が私達の寮監督っていうのは良い事なのか悪い事なのか知らないけど面白そうな人だよな、と思いつつ。
西園寺は全員が大人しくなった事を確認すると今度は寮監督生について寮に戻り、11時には就寝するようにと指示を出した。
それ以降に談話室が騒がしいようであれば減点するとも話した。
点数が年最後の寮の勝ち負けに関わってくる事は全員が知っていたので殆どの生徒が時計を確認した。
9時30分、といったところか。
「ほら、早く寮戻ろうぜ!。」
「誠二。落ち着いて行動してね。」
「タク、信用してあげなよー」
「藤代。今から1年生の歓迎会と自己紹介をやるからな。寮内に居ろよ。」
「・・・・・・・・ハイ。」
何でこんなにしょげてるのか最初は分からなかったけど、すぐにその理由は分かることになる。
「何て言うか、2次会って感じだね」
「そうだね。はこういうの初めて?」
「うん。・・・・・・・ってさ、どうして誠二は拗ねてるの?」
「誠二くんはさんとここを探検しようとしてたんですよ。」
クスクスと笑いながら遥青が言うと、は素直に自分もしたかったと頷く。
こんな楽しそうなところなのだ、探検したら面白いに違いない。
竹巳、遥青と並んで寮の談話室で話しながらは誠二を見て笑った。
それはそうと、やっぱりどこか寂しいと思うのは遥青が自分の事をさん付けで呼ぶ事。
「ねぇさっきから思ってたの。『さん』ってやめない?『』でいいから。」
「え?あ、でもこれは・・・」
「いいでしょ?あたしも遥青って呼びたいし、ねっ?」
「癖なんですよ。『さん』とか『くん』付けなのは・・・でも。・・・がそう望むなら、ね。」
女の子同士で居るときだけですよ?と内緒話のように言う遥青にはうんうんと頷いた。
竹巳は聞こえていなかったようで、どうかした?とたちの方に向き直る。
くるりとした猫目が2人を捕らえた。
遥青はニッコリと笑って答えた。
「ヒミツですよ。」
「・・・っ」
「タク、顔赤いよ?」
「そ、そんな事無い!」
おや?とは竹巳の顔を覗き込んだ。
「ひょっとして、竹巳って」そう言いかけたがそれは心の中に収めておく。
遥青がきょとんとしてを見ていたからだ。
(タク大変だねー・・・)
「さぁ、じゃあ軽く自己紹介でもしようか!」
寮長渋沢の一言で寮が席につき始めた。
別に誰が座れと言ったわけでもないのだが自然とその行動が出来る。
これも寮長としての器だとは1人尊敬していた。
知らないことも面白い事もたくさんある。
だからこそあたしは今この一瞬を大切にしたい。
今の一瞬は次には無いものだから、さ。
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