「昔は本校のレイブンクロー寮だったんじゃよ」
意外っつーか何つーか。
こんなところにホグワーツ卒業生がいるなんて思わなかったな。
俺たちは促されるままに店の中の小さなテーブルを囲んでお茶を飲んでいた。
石についての説明を杳と翼が興味深そうに聞いている。
は、というとお茶を飲みつつ、困ったような顔をしていた。
「どうした?」
「え?何でも・・・?」
・・・無いって風には見えないんだけどな。
アンダリュサイトとかいう石を持った杳は真剣に話を聞いてるけど買い物の時間・・・忘れてねぇか?
「翼」
「わかってる。もう行くよ。」
「おや、もう行くのかい?・・・ではお嬢さん、その石はあげよう。」
「いいんですか?」
「もちろんだよ。そっちの君は・・・アメジストじゃな。」
翼を指差して爺さんが取ったのは紫色の石。
そしてマラカイトとかいう石とダイヤモンドを取った。
んで懐から杖を取り出すと杳に石を机に置くように言ってからそれを石に向けて振る。
一瞬魔法かけられるかと思った、何考えてるんだか。
しゅるるっと風が石を包み込むように吹いて、それが止むとそこには加工された石が並んでいた。
指輪とペンダントにブレスレッドか・・・。
「す、すっごーいっ!」
「ははは、お嬢さんは魔法初めてかね?ほら。」
「ありがとう!そうなのよお爺さん。わー、すごーい、きれーい。」
「お兄さんたちも持っていくといい、レイブンクロー生だしな、無料だよ。」
「ども」
「ありがとう」
「それから・・・」
「・・・」
店主とはお互いにへこりと頭を下げた。
そういえば、と杳は首をかしげる。
いつものならこんな事は無いはずだ。
いつも声に出して『ありがとう』とか言うのに、どうかしたんだろうか?
でもまぁ笑顔だし良いか?
「ありがとうお爺さんっ!」
「また機会があったらおいで」
「はーい!」
ぱたぱたとレンガ通りを歩きながら翼は辺りを見渡した。
ホグワーツの生徒も多いがもちろんそれ以外の人もいる。
・・・外国人ばかりだ。
そういえば、どうして話せるのだろう。
俺たちは当然日本語を話してたはずなのに。
「、何でこう・・・話が通じるんだ?」
「あぁ・・・それは・・・多分あの暖炉に魔法がかけてあったんじゃないかな?」
「あの松下サンが?」
「多分ね。じゃないとこう話が通じるわけが・・・つばささん!本屋さんここです」
「ありがと、。そっか、純血だから来たことがあるんだ?」
「ハイ。」
黒いローブを翻し、軽く笑って戻ってきた翼筆頭に店に入る。
右を見ても左を見ても高い本棚が在る。
大きな本棚にぎっしりと詰まった様々な本。
翼は脚立・・・か?異常に長い階段のようなもの、に足をかけている店主に紙を振って見せた。
「店主!ここに書いてある教材揃えて送ってくれる?ホグワーツレイブンクロー寮宛。」
「任せなー。それじゃ代金だけ貰おうか!」
「分かってるから早く降りてきなよ」
「相変わらずだねぇ椎名サマは。」
くくっと、まるで柾輝くんのような笑みを浮かべた店主さんは足を脚立に引っ掛けたままこっちに顔を向けて。
というよりも足をかけて頭が下に・・・っぶら下がってる状態。
「ちょ、えぇ、いいんですかつばささん!?」
私が慌ててつばささんに言うとつばささんは「けっ」と言わんばかりに顔を顰めた。
「あいつはああやって人をからかうのが趣味なんだよ。見て分かるだろうけど日本人だし。」
「あー、やっぱそうねなの?黒髪だしイギリスの人には見えなくって」
「そうそう。って杳、イギリスって?」
「ホグワーツの本校はイギリスだろ?ここはダイアゴン横丁。イギリスの商店街だよ。」
「へぇ。翼はともかく杳、よく知ってるな。」
「このプリントに書いてあるよ柾輝・・・。」
柾輝と杳はここがどこかについて話し始めていた。
その間に翼は本屋店主にプリントを渡す。
店主は「りょうかーい」と軽い調子で言ってそのプリントをエプロンのポケットにしまう。
黒髪短髪のまだ若い店主だ。
見たところ自分たちと同じかそれより少し上の男である。
はまじまじと彼を見つつ首を傾げた。
「どこかであったような気がする?」
「えっ?あ、はい。でもそんなはず無いですよね?」
「さぁ・・・知らないな。お名前は?俺は店主って呼んで。」
「です。店主さん。」
「よろしくー。ホグワーツさんはお得意さまださー」
「ははっ、これから宜しくお願いしますね・・・っ、えぇ?」
「うん?」
「あ、いえ何でもないです・・・つばささん!早く次の買い物に行かないと周れなくなります!」
「あぁ。じゃ行くよ!」
「はい!・・・って杳さんと柾輝くん置いていくんですか!?」
「来ないやつが悪い!じゃあな!店主!」
「毎度さーん」
「ちょっ、まってよ!」
「何やってるんだか・・・どうも、店主サン。」
「毎度〜・・・」
ガラン、とした本屋に残された店主は作られた笑顔を崩して振っていた手を下ろした。
そして近くにあった踏み台の椅子に腰掛けると息をつく。
「成る程、ねぇ・・・?」
呟きは、誰の耳にも届かない。
「ここが杖の店。オリバンダーっていう店主がいる。俺はもう持ってるけど着いて行くから。というよりもう着いたから入るよ。」
「おや、これはこれは椎名様。今日はどのような?」
「この3人の杖を選んで欲しくてね、頼める?」
「かしこまりました。では少しお待ちくだされ。そこにでも腰掛けて・・・」
いかにも、な作りをしたその店に入っていくと爺さんがせかせかと杖を片付けているところだった。
その爺さんは俺たちに気がつくともっと奥に来るようにと俺たちを促す。
おずおずと杳が進み出ると爺さんは戸棚から一本杖を取り出した。
それを振らせて結果を見ると満足したように頷き、俺にも一本杖を渡す。
それを受け取って同じように振るとその場が一瞬で涼しくなった。・・・寧ろ寒い。
「お嬢さんは柳の木26センチ、10・1/4インチでどうだろう?振ってみてくれるかな。」
「え、あ、はい。・・・っわ・・・」
「ふむ、君は・・・楓の木不死鳥の羽の18センチ7インチかな、どうだい。」
「・・・寒いんスけど」
「おや、では・・・同じ楓の木鷲の羽根28センチ10・1/2インチならどうだい。」
「・・・っ!?何かパチって・・・電気?」
「うむ、君にはこれが合っているな。さて、そちらのお嬢さんは・・・」
爺さんはを見ると箱を選ぶ手を止めた。
「・・・」
「これはこれは・・・。」
「お久しぶりです。」
軽く息をついて微笑んで、挨拶。それだけの事ができれば良いのに。
今のこの状況じゃ何もできない。
本当は、もっとつばささんたちとも話ができるのに。
店主さんたちと話もしたいのに。
でも、それはできない。
外で話したらきっと違和感がある、気付かれてしまう。
私が原因なのはわかってるけど、それでも・・・―――――――――
「これですね」
オリバンダーさんから杖を受け取って軽く振るとキラキラと光が出てきた。
それに微笑んで頭を下げると、彼はいえいえと箱を手渡してくれる。
「ありがとう」という言葉を発しはしたけれど通じたか、どうか。
つばささんが離れた椅子に腰掛けつつ、怪訝そうにこっちを見ている。
何て言うか・・・『何か』忘れてる気がするんだけど、それが分からない。
昨日もつばささんは何かを言いかけたけど言わなかったし。
今日だって、どうして私だけ・・・?
「なぁ、どうしての杖は奥から?」
「あの方は様でしょう、椎名様。様の長女様は幼い頃にもう杖をお決めになられていましたので。」
「決めてたって?」
「様は純血でいらっしゃいますので。お受け取りは他の生徒さんと同じときにとお決めになられていましたけどね」
「ふーん、ありがとう。代金は?」
「領収書を送りましょうか?」
「玲と違うからね、ここで済ますよ。」
多少うんざりしたように翼が柾輝と杳に代金を出すように指示する。
言われたとおりの額を出すと、礼を言って彼らは店から出た。
「、今日どうかした?」
「何でもありませんよ、つばささん。」
この違和感に気が付いたのはこれで何人か。
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