「、こっち。」
上のほうから聞こえたはずの声にが胸をなでおろしたのが分かった。
木から飛び降りると、近場の丘で横になる。
空には星が輝いていた。
さて、と言いたげに自分を見る翼には一瞬戸惑いを見せた。
翼は寝転がったままで言葉を発した。
「あのさ、。」
「・・・はい?」
何て言うつもりだったんだろう?
を呼んで、その後に。
俺は、何て言うつもりだった?
『俺とってどんな関係だったっけ』
聞けるわけ無い。
「は純血だよな?」
「そうですよ?それが、どうか・・・?」
「いや、何でもないよ。ま、いいや。もうすぐ時間だし戻る?」
「え?あ、はい。でもつばささん話があったんじゃ・・・」
「別に大した事じゃないよ。が気にすることでもない。」
「そうですか?」
「そ。早く戻るよ。」
が1つ頷くと翼はその右手を握って走り出した。
ザクザクと芝の上を走り、門を開けると寮に滑り込んだ。
ふぅ、と息をつくと翼は柾輝と顔を見合わせる。
柾輝がどうだ?と口パクで聞くと翼は首を振ってそれに答える。
「おい姫ぃさん!そろそろ11時になんでー」
「そうだな。明日は買い物もあるし・・・今日は解散だ!それぞれの部屋に行って寝るように!
あんまり目立った行動なんてしてみなよ?どうなるかってのは先輩に聞けばわかる事だからさ・・・!柾輝でもいいけどね。それじゃ解散!」
それに1年生は首を傾げ、2年生はうっと言葉を詰まらせて部屋へ向かった。
2年生のその様子に、新入生はそれ以上の事を追及しようとは思わなくなったらしい。
諦めたように自室へ戻っていく。
「杳さん!部屋に戻りましょう?」
「そうね・・・。、椎名さんと何かあったの?」
「別に何も無いですよ。」
杳は怪訝そうにを見た。
(何か、そう、何か。違和感があるのよね・・・)
はくるりと後ろを向くと部屋へ戻っていく。
(何だろう。何か・・・気のせい?)
昔と比べての違和感が杳の頭によぎる。
その考えを頭を振って消し、杳はと部屋へ戻った。
9月2日、本日は全校一斉買い物の日です。
新入生も2年生も皆でお買い物に行く事になりました。
レイブンクローは個人行動さえしなければいいということで、適当にやってくれとの通知が。
松下先生専用教室の暖炉の前に集まって。
関係の無い道に行かないように気をつけて、さぁ出発です。
・・・出発、です、が。
「んじゃ、ここを順番にくぐれよ。そしたら一緒に行動する奴を待つように。まず椎名から行けよ。」
「わかってるよ。じゃあ。後で。」
暖炉を通っていくんですか。
「ほれ吉田。」
「分かってますってー」
何で平然と?ねぇすいません。
「みかみー」
「棒読みかよおっさん。」
炎。燃えてますよ?無視ですか?ねぇ無視ですかっ?
「1年も行ってみるか。桜庭ー」
「お、俺は後でいいっす。
「後って・・・大丈夫だからそんな堅くなるなよ。」
「だって燃えてるんですよ!?」
ひぃ!と半分涙目で訴える彼。
うん、もっともです。サクラバくん。
私もそう思います。
「いやいや、燃えてるように見えるだけだから。実はここから別のところに繋がってるから揺らいで見えるだけなんだよ。」
「・・・・・」
「んー・・・じゃあ女子が行ければ問題ないな。!」
「・・・はい?」
「行ってみるか。」
「・・・ハイ。」
ごめんなさい怖いです。
茶色い暖炉の中には確かに炎が見えてますよ?
でも、コレも魔法なんでしょうね・・・。
ふぅ、と息をつくと私は前に進み出た。
恐る恐る、右手を伸ばす。
「じゃ、行ってきます」
「おう。」
「はぁ・・・」
にょ、と右手を差し出すと、揺らいでいる世界へ繋がったようで熱くも何ともなかった。
「行けそうですよ。サクラバくん。」
少し怖いですけどね!とは付け加えずには前を見た。
と、そのときものすごい勢いで手を引っ張られる感覚がして・・・。
「へわっ!?」
否。
「いつまで手だけ出してるんだよ。」
引っ張られた。
「つ、つばささん・・・怖かったですよ・・・」
「大丈夫大丈夫。それはともかく、まぁ見てみなよ。」
レンガの家や見せが立ち並ぶ商店街のような場所。
レンガであることをのぞけば商店街と言って間違いないだろう。
ただそれだけが西洋のような雰囲気をかもし出している。
道を歩く人々は黒い帽子やローブを着ていて明らかにその道の人たちだという事をうかがわせた。
時折見かける個性的な色のローブや帽子はその人の趣味なのであろう。
かかっている標識も何もかもが目新しい。
は翼にひっぱられてドキドキしていた鼓動を落ち着かせ、辺りを見渡した。
「・・・世界が違う・・・」
「だろ?ここがダイアゴン横町。今から買い物をする場所さ。」
「わー、すっごー!」
「ホントだな」
すとん、とん、と杳と柾輝も上から降ってくるように出てきた。
それにぎょ、と驚くとの手を握って、さぁ行こうっ!と杳が笑顔で言った。
笑顔で返すと、杳は至極当然に、「で、どこから?」と返した。
翼は1年生の買い物リストに載っているモノを見て何かを決めているようだ。
その紙を畳んで柾輝に返すと彼はそれを受け取った。
「まずは教科書を買いに行くよ。」
行こうか、では無く行くよ、という断定なのが流石椎名さんだわ。と杳は感心しながら付いていく。
それにしても不思議だ。
確かにここはヨーロッパの様な雰囲気があるのに看板や店に書かれている言葉は『安売り』『教科書』などの日本語。
違和感もあるけれど、と苦笑いしながら辺りを見渡す。
日本語でいろいろと書いてあるので不思議な物もすぐ反応できる。
時には『マンドラゴラの根』『マンドレイクの歌声』などよく分からないものもあったが。
と、杳が不意に立ち止まってその見せの外売りの商品を指差した。
その商品の看板には『指輪やペンダントにも加工します』と書いてある。
店は小さかったが、それが逆にここの商品を本物だと証明しているようにも見えた。
「あ、!コレ見て綺麗!」
「ホント・・・綺麗ですね。」
「石か?」
「これは魔法石だね。2年の選択科目にコレを習う教科があったな。
あー・・・確か自分に合う石を身に着けていると、色々な効果を示す石だったと思うけど?」
「流石つばささんですね!」
「そんな事も無いよ。予習してればコレくらいは出来て当然。」
「んー・・・じゃあやっぱ高いのかな。値段書いてないけど・・・。」
「かもな。どうなんだ?翼。」
「さぁ、俺も買った事は無いからね。店員にでも聞けばいいんじゃない?」
翼がそう答えた直後、その言葉を待っていたかのように店員ら人物が出てきた。
初老のお爺さんだ。
ベストのようなものを着て眼鏡をかけている。
お爺さんは杳が1つ掴んでいる石を見て首をかしげた。
「お嬢さんにそれは合わないな。こっちにしたらどうだい?」
ひょい、と杳の持っていた透明の石を取り上げると別の石を杳の前に差し出す。
杳がそれを手にとるとお爺さんは満足そうに頷いた。
「やはり君にはこれが合っているな。」
「お爺さん?これは?」
「アンダリュサイトという石でな。見る方向によって黄,緑,赤,の多色性がある石で、
この3種の彩光を放つところから、希望,成長,繁栄を象徴する石と呼ばれておる。
集中力や洞察力を高める石で・・・あぁ、ストレス解消にも有効だよ。お嬢さん。」
翼のマシンガントークに匹敵するほどすらすらと何かを読み上げるようにそう言ったお爺さんに、
翼以外の3人が驚いた。そこまでさらさらと言えるところを見ると、お爺さんは店主らしい。
杳はその石を空にかざした。たしかに角度によって黄色にも緑にも赤にも見える。
それに杳は嬉しそうに声を上げた。
店主は顔を綻ばせるとその服装を見ておや、と少し驚いた表情を見せる。
「ホグワーツ、レイブンクローの生徒さんたちかい?」
今度は自分たちが驚く番だった。
は翼と杳、柾輝の顔を見るとそれにまた驚いた顔をして何かを考えるように黙り込む。
そして顔を上げると、彼女は困ったように目の前の老人を見た。
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