「あれれ〜?どうかしたんですか?」


間の抜けた声に、はゆるゆると顔を上げた。
組み分けも終わって、ざわざわと騒がしくなってきている寮テーブルの周りでもその声は嫌に響いた。

























「・・・・・・・・・・・いや、何も。」


蹲っているに話し掛けていたのは分かっていたのだが、別に具合が悪いわけでもない。
立ち上がって長椅子に座ると、その人物も(何故か)笑顔でその隣に腰掛けた。
怪訝そうにその人物に顔を向けるとにっこりと、嫌味なほどの笑顔を向けてくる。


「・・・・・・」


左隣に居るその人物はの心境などお構いナシにじろじろと本人を見やる。
右隣の捺がそれに気が付くとキッとその男を睨みつけた。


「えーと・・・何?」
「いや、君そんな風に話してるけどホントは」
「!!」


女の子でしょう?そう小声で言われて、思わず固まった。
初対面で見破られる事なんて無かったのに。
捺は少しの間一緒にいて気が付かれたくらいで。
こいつ、今あったばかりだろ!?


「・・・なんで・・・」


その様子を斜め前に居る英士や正面の結人、一馬がじっと見ている。
声は、聞こえてないみたいだ。


「分かりますよ〜こんな可愛い顔してるんですからね〜」
「・・・っはぁ!?」


顔を崩して心底嫌そうにその人物を見やるに、3人が動いた。


「ちょっと、止めてくれない?嫌がってるんだけど」
「っつーか名前も知らないやつにそんなこと言われたくねーし」
「俺らの友達に手、出してんじゃねぇよ」
「あはは。君達は気がついてないんですね〜?」
「「「!?」」」
「では名前でも名乗っておきましょうか〜?僕は須釜寿樹です〜。君たちの先輩ですからよろしく」


その言葉に、結人は声を出して笑った。
英士はにっこりと笑って「そう」と呟く。
それには、そっちの方が偉いって言いたいわけだ。と言外に含まれていた。


「偉さの点では問題ないよ。俺のイトコ、ココの寮長だから。」
「李くんのですか?」
「そう。李潤慶。俺のイトコ。」


にこ、という笑みが対峙する。
何となく怖いんだけど、と前の一馬にいうと、もはや彼は言葉もないといわんばかりに頷いていた。

捺は自分の寮のテーブルの会話を聞きながら、レイブンクローの寮テーブルを見つめていた。
カワセシキ、そう呼ばれた人物がさっきから引っかかっている。
(あの人と、グリフィンドールのあの人。似てるんだよね・・・)
の方に顔をやると、どうやら1段落ついたようで、スガマという人物がまたあとで、とか言いながら席を立つところだった。
(来なくていいっつーの)
捺はふん、とその人物を一瞥すると、前に顔をやった。

・・・と、西園寺が手をパンパンと鳴らす。
それと同時に騒がしかったこの部屋が一気に静まり返った。
では校長先生のお話にうつりたいと思います。
という言葉で偉そうな、でもハゲている人物が前に出てきた。
何かを話してはいるがそれはや結人、英士、一馬、捺の耳には入っていない。
クィディッチの話でまた盛り上がっていたのだ。
よく注意されないなとそれぞれ思いながらもその話を止める気配は無い。
校長の話が終わるまで、そのままの会話が続いた。
そのうちまた手が鳴って西園寺が口を開いた。
「では寮に案内します!グリフィンドールは私。
 レイブンクローは松下先生、スリザリンは榊先生が寮監督です。各先生の指示に従って動いてください!」
その言葉に従って、寮ごとに動き出す。

























「ここがスリザリンの寮だ。トロイはいるか?」
「居ますぜ旦那。合言葉はなんでぇ。」
「その前に、ここに居るメンバーが今年のだ。頼むぞトロイ。」
「へぇへぇ。合言葉さえ言ってくれりゃああっしは何もいいませんでぇ。」


絵が話してる・・・・・!?
はまさに、開いた口がふさがらない状態でぱくぱくとしながら結人に顔を向けた。
なにせ結人とはついさっきまでクィディッチの話で1番仲良くなったクチである。
結人は何故か自慢げに腕を組むとその『絵』の説明をした。


「ココに掛けてある絵ってのは、ホグワーツの肖像画なんだよ。こいつらがそれぞれの寮の門番みたいな感じかな。
 だからこいつらにそれぞれの合言葉を言わないと寮に入れてもらえないんだぜ!」
「へー・・・んじゃ合言葉を覚えとかないといけないのか。」
「そーゆーこと」


榊が軽く咳払いをする。
気が付き、前を向くとなんともやさしい顔でこちらを見ていた。
まるで自分の事を知っているかのような、だ。


「『福助福助福袋、福福笑うは福の神』しっかり覚えろよ。」


――――――――――――早口言葉・・・・!!?


そのとき、寮生の誰もがそう思ったらしい。
しかしそんなこととは知らない榊はトロイが開けた道をくぐって寮の中に移動する。
全員が入った事を確認すると口頭で寮を案内した。


「―――以上だ。男子は李に、女子は鷹澄について案内してもらえ。15分後には歓迎会が始まる。
 各自着替えてそれに遅れないように集合。監督生、頼んだぞ。」
「任せてください」
「では、解散」


それだけを言ってまた絵画から出て行く榊を見送ると、李と呼ばれた少年が声を上げた。


「ヨンサ久しぶりー!やっぱりここだったね!」
「英士!?ど、ドッペルゲンガー!?」
「違うよ。」
「こいつは李潤慶。英士のイトコで俺たちの1つ上の先輩。」
「へぇ、俺はデス。英士とか結人とか一馬の友達に今日なりました。」
「あたしは小島捺、と同じ。よろしくお願いします。」
「うん、よろしく。また詳しい事は歓迎会で聞くとして、とりあえず着替えようか!1年の男の子こっちねー!」


には、潤が笑顔でそう言うとはそうだね、と言って捺と離れようとした。


「へ?、なんでそっち?」
「・・・―――だって、わたし、こっちの寮だもん。」
「え、え、えぇ!?」


結人の言葉に、声と一人称を変えて答えると一馬がスットンキョンな声を上げた。
英士も驚いた顔をしてを見た。
(あの時の違和感、やっぱり信じて置けばよかった)
周りでは何人かが驚いたような声を上げているが、それを1人の女性が遮った。


「あら、いいじゃない。可愛くてカッコいい子。文句有るなら、私が受けて立つわよ?」


それは2年生スリザリン唯一の女生徒、鷹澄やひゆだった。
ふふ、と笑うその顔のパーツは整っていて、それが逆に凄みをきかせていた。
そして何より他の生徒が思ったのは・・・目が笑っていないという事だ。


「じゃ、私たちは行くわね。潤慶、そっち頼んだから。」
「OK−任しといて。」


そうして別れていく男子と女子。
は双方を見ながらまだ続いていく寮内のざわめきに笑みを零した。
(やっぱ、騙すのは面白い!ゲーム終了だね!)
そして2人がやひゆを見上げると彼女もまた、顔を覗き込んだ。
やひゆの方が背が高いので自然とこの形が出来る。


「改めて歓迎するわ。ようこそスリザリンへ。さん、小島捺さん。」
「「はいっ」」


あぁ、楽しくなりそう。
そんな期待を胸に、2人は案内された部屋に足を踏み入れた。







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