空が好きです 青が好きです
ピアノが好きです 本当はサッカーも好きです
姉さんも好きです それから・・・。







空色音楽室6








彼女は書類送検という形になったらしい。
未成年だから仕方ないにしてもこの結末はあまりにも・・・。
そんな事を思っていた翌日。
やっぱり朝は音楽室から音が響いていた。朝練の時に奏でられている、そして昨日の優勝曲。
いつもと違うのはその旋律が欠けていないと言う事。その曲が響いているのを聞いたさんは顔を綻ばせていた。
朝練が終了してすぐ、俺は音楽室へ向かった。
そこにはいたけれど、音楽室はいつもと違った。


「空色・・・」
「笠井。昨日ね、私にスポンサーがついたの。」
「え?」
「それで、まずドイツに行くんだって。手術をするために。」


昨日の段階で、あの人たちは罪を認めこそすれど賠償金には応じなかった。
裁判で勝つ見込みがあるにしてもそれでは時間が掛かりすぎる。


「それで、世界に行ったら・・・『竹巳』って呼んでいい?」
「・・・もちろん」


はあのときのように笑うと、一曲一緒に弾こう、と言って俺を鍵盤の前に座らせた。
2人で弾くのは久しぶりだけど、不思議と手がとまる事は無かった。
演奏が終わって、青い部屋の中にいると何故か不思議な気持ちになる。
いつもは自分1人で過ごしていた空色音楽室に自分以外の人物がいるんだ。


「私は、笠井に逢えてよかった。」
・・・?」
「笠井がいなかったら私はここまでくることは出来なかった。姉さんや三上さんや渋沢さん、誠二くんにも会わなかった。」


それは事故にあうことで“偶然”に出来た“運命”かもしれない。
それでも彼らがここにいることに変わりはなくて。


「約束も、何もかもが笠井に繋がってる。私は絶対向こうで何かを伝えられるピアニストになるから、笠井も来ないと承知しないよ。」
「・・・うん」


泣き笑い。まさにその言葉が似合う表情だ。
俺はただ頷いて、自分の身勝手さを呪った。
ばかじゃないか。
は約束を果たす為に行くのに。
自分の夢を叶えるために行くのに。
俺は今、何を思った。
行くな、と心のどこかで思っていただろう?
こんな俺に嫌気がさす。


「じゃあ、ね」


がここからいなくなる。


。返事、聞いてない。」


・・・―――――――それでも。


「・・・分かってるくせに、言わせたいんだ」
「当たり前だよ、俺だけなんてずるいだろ。」


きっと大丈夫だ。


「大好き。」


大丈夫。俺達の心は繋がっている。


「私も、笠井竹巳が好きです」


本当は離れるのは少し辛くて、でもピアノを弾きたいっていうことに変わりはなかったから。
私は行くことを選んだんだ。
何よりも自分のために。
ずっとずっと一緒にいることが大切なんじゃなくて、私にとって大切なのは・・・。



















「暑い・・・・・・・」


4年ぶりの日本の夏はやっぱり暑くて、汗だくだくで武蔵森学園の門をくぐった。
スーツケースをガラガラと引きずって、まずは職員室へ行く。
姉さんはもう卒業しているから校内にはいない。
だけど知っている先生もまばらにだけど残ってたりして。
私を見て驚きと賞賛の声をかけてくれた。
知らない先生ですら私の名前を聞いて応援してるよ、って声をかけてくれる。
笑顔で見学許可を貰うと、私はすぐに第2音楽室へ向かった。
普通の人は使わない、第2音楽室。
扉のノブに手をかけてゆっくりとその戸を開ける。
そこは大切な大切な、


「おかえり、。」


彼が居る場所。


「ただいま!竹巳!」










ここは空色音楽室。
私と彼の始まりの場所。
そしてまた新しい約束を生む場所。

























++++++++++++++++++
あとがき。
最終回は簡潔に!が目標でした。
主人公さんの性格が変わってるとか言うのはきっと気のせいです。
宣言通り春休み中に完結しました。良かった良かった。
感想などありましたらくださいね。
2005年3月21日書き始め。
2005年4月2日書き終わり。