駅から出発してもうすぐ着くと言われた直後、はいきなりバタバタとしはじめた。
それに気が付いた吉田がどうしたん?と聞くとその動きをぴたりと止める。
そして、苦笑いを浮かべて振り返った。































・・・・・・・・あれ。
ひょっとして忘れモノ?
っていうか、いないよね。うん。いつから?


「ブラン、忘れてきちゃったかな?って・・・。」
「あぁ、それなら問題ないで。動物はそれようの車両があるからそっちに案内されてんやろ」
「そやな。まぁホグワーツに着いたら合流できるで。」
「そ、そっか、よかった〜〜〜〜〜」


ぺたんと椅子に座る。2つに縛っていた髪が揺れた。
そして1つ落ち着くとすぐにシゲが立ち上がった。
大きな曲道に入って、少し傾きながら列車は進んでいく。
森のように暗い道の奥に大きな城のような建物が見えた。
それに目を輝かせては窓から身を乗り出すようにした。
(すごい、すごいっ!!)
騒ぎ出したいほどにはしゃぎながらも、はそれを留めている。
うずうずとしながらそのお城のような建物を見上げていた。
薄暗かった道がだんだんと明るくなってくる。トンネルを抜けてすぐその列車は停車した。
到着ーというアナウンスの声に、3人は列車から降りた。


「なんや俺らが乗ってからかなり増えたみたいやな。」
「今年は1年生も多いみたいやしね。」
「そうなの?」
「そやで。去年は・・・12人やったかな?」
「少なっ!?」


話をしながらキョロ、とはあたりを見回した。
すると後ろから白い物体が飛んでくる。
はキラン!と目を光らせると一瞬でそれを避けた。


「ふっふっふっふっふー。そう簡単に同じ手に引っかかるもんですか!」
「ホー!」
「はっはっはっはっはー!」


ブランの再アタックをかわすと、はブランと対等に勝負を始めた。
その様子をおかしそうにシゲとノリックが見る。
大爆笑しているのにもは気がつかず、必死でブランと追いかけっこを続けていた。
・・・ブランは空を飛んでいるのだから捕まえられないとが気が付くのはいつになる事やら。
と、前のほうにある池の前でこの列車の運転をしていた男の人があの時と同じ大声で叫んでいた。


「大きい荷物はもう学校に運んでおいたからー、とりあえず前のボートに乗ってくれ!5人ずつだから頼むぜ!」


それにのって渡るとすぐ前には学校がある。
はそれを見て嬉しそうに、そして不思議そうに2人に聞く。


「これが魔法の世界の普通なの?」


もうすっかりとタメ口が馴染んできていた。
さっきまでの緊張ももう解けてしまったようだ。
の問いに、んな訳あるかいっ、とシゲが突っ込むが。
は勝手に「やっぱそうかー」、と何やら1人で納得してしまったらしい。
俺の言葉は無視やで?とノリックに訴えると空笑いされた。
はぁ、とシゲは溜息をつくと明るい空を見上げる。
そのときが前のほうでドアを指差して待っているのが目に移った。


「シゲさん、ノリック!入っていいかな!」
「入らんとあかんやろ」
「寮わけもあるやろしね。」
「寮分けかぁ・・・」


1歩足を踏み入れるとその装飾にはふら、と足元がふらつく。
慌ててシゲがそれを止めようとしたときにが呟いた一言は。


「た・・・高そう・・・っ!」
「そこかいな!っていうかまさか今のふらつきはワザとやろっ」
「うん。」
「あっさりやな〜。それはそうときっとコレ高いな、去年は気ぃつかへんかったけど」
「わー・・・。」


暗めの部屋に赤い絨毯。
辺りには蝋燭の光が灯って神秘的な雰囲気をかもし出している。
あたりの新入生もその光景に見とれているようだった。
奥に続いている道にパラパラと人が流れていくのが見えるが、あまりその人数は多くない。
ふ、と通り過ぎた青い灯りには首を傾げた。
(なんだろう?蝋燭の灯は赤とか黄色だし・・・)
そしてそれに手を伸ばそうとした瞬間、すっと前のほうから声が聞こえた。


「みなさんこんにちは!」


女性の声だ。
後で知ることになるが、それは西園寺玲副校長の声。
が前方に目をやった瞬間、『くにゃん』と世界が回ったような気がした。
そしてハッと気が付くと自分の居場所が変わっている。


「な、なに?魔法?」


辺りを見渡すと、さっきまで一緒にいたシゲとノリックはいない。
(嘘ででしょ?っていうか何?どうなってるの?)
部屋の奥になるのだろう。
赤い絨毯より奥にはテーブルが3つと旗が3つ、それぞれの寮のカラーで揃えられていた。
そしてその周りには学年が上であろう人たちが長椅子に座っている。
その中のひとつに金髪が見えた。
(シゲさんだ、ノリックもいる!)
少し落ち着いては自分の周りを見る。
数人のグループが仲良さげに話しているのを見て少し不安になった。
(ちょっとちょっと・・・あたし知ってる人いないんだけど・・・?何、みんな知り合いがいるの?)
は、はは、と引きつった笑いをした。
と、そのときテーブルよりも向こう。教員の席で先ほどの女性がもう1度声を上げた。


「1年生の皆さんはじめまして!私は西園寺玲。この学校の副校長です。
 2年生の皆さんお久しぶりです!では今から1年生の組み分けをしたいと思います。
 1年生は呼ばれた人から順番に前にある帽子を被ってね!じゃあ、さんから行ってみましょうか!」


ちょっと待ってよ。そんな事を思ってももう遅い。
は仕方なく前に進み出た。


「貴方がさんね入学おめでとう。さぁこれを被って。」
「はぁい・・・」


仕方ない、と言いたげには壇上にあがった。
イスに置いてある帽子をひょいと持ち上げて、西園寺の促すままにそれに座ると帽子を頭に載せた。
髪の毛の束のおかげで顔全部は隠れはしないもののかなり下までズッポリと収まる。
(まっくらだよ・・・どうやって決めるんだろうなー・・・)
なんて考えていると、その帽子がいきなり話し出した。
(え、ちょ・・・話し出した!?)
頭に直接響くような声に、は驚いて固まる。


「(どこがいいかな)」
「(え、えぇ・・・!?)」
「(ふむ。頭もいい。度胸もある。しかし少し友達に偏りがある。うーむ。)」
「(ちょ、ちょっとちょっと?)」
「(さて、何色が好きだ?)」
「(黄色とか、オレンジとか?そういうの・・・?)」
「(即答できるか。)よし決まりだ」


あたしがあたふたとしている時間の間にも帽子は勝手に決まりだとか何とかぬかしている。


「グリフィンドール!!」
「ちょ、えぇ?」


わっ、とグリフィンドールのテーブルから歓声が上がる。
帽子を取ってが半分放心状態でいると、西園寺が帽子をひょいと取り上げた。
赤い旗の寮に行くように、といわれては壇上から降りてキョロ、と辺りを見渡すと、赤い旗のあるテーブルへ向かった。
全体的に優しそうな顔立ちの人が多い。
オレンジがかった髪色の少年が立ち上がると彼女に向かって優しく微笑んで見せた。


「ようこそ、グリフィンドールへ」
「あ、は、はいっ」
「堅くならずに。とりあえず椅子にでも座っててくれ。寮分けが終わったら自己紹介の時間をとるから」
「はいっ!」


第一印象は、優しそうな人だな、ということ。
はその少年にお礼を言うと後ろの方の席に向かって歩いていった。
そこには見慣れた姿と赤みがかった髪色のショートカットの少女が戯れていた。


「ブラン!」
「ホー」
「ブランって言うの?このコ、あなたの?」
「あ、いや学校からの、です。手紙を届けてくれた・・・。」
「そう?それにしては貴女に懐いているんじゃない?」


純白の羽根を持つフクロウがその少女と共にグリフィンドールの寮にいた。
を待っていたかのようにそのフクロウは彼女に向かって飛んでいく。
珍しくタックルする事も無く彼女の周りを飛び始めた。
は手招きされるままにおそらく先輩と思われるショートカットの少女の隣に行った。
彼女はにっこりと笑うと右手を差し出した。


「私は相坂紅留。グリフィンドールの2年。よろしくね。」
です、よろしくお願いします!」


きゅ、と手を握り返してお互いに笑顔を見せた。
(よかった。ここの人みんな良い人そう・・・――――――――)
は笑顔で壇上を見た。
そこではまた、別の新入生が呼ばれて寮わけをしていた。


いきあたりばったり?
上等!
できる限りの道を進んでみようじゃない。
・・・それくらいの意気込みでこれからも乗り切ってやろう。







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