「さ、みんな!ここが寮です。この絵の住人はティアとスティル。2人とも挨拶は?」
「「こんにちはっ!」」
「あ、さっきのと将だ!」
「ここの寮だったの?よろしくねっ!」
ちょ、ちょっと待ってよ。
絵が動くところまでは認めたけどさ、でもっ。
「しょ、将・・・」
「な、何でしょう・・・」
「絵って喋るの?さっき向こうにいた絵だよね、何でいるの?絵って動けるの・・・?」
「さ、さぁ・・・」
列の最後尾で西園寺さんの話を聞いていた私たち2人は壁の絵の2人に固まった。
「あっ、だめでしょティア!驚かせないってさっき言ったばっかりなのにー!」
「忘れてたーっ!」
「ティア、スティル、合言葉とかの説明してね・・・?」
壁の絵の慌てぶりに、周りの生徒たちは苦笑するしかなかった。
「・・・と、言うわけでー入るときには私達に合言葉を言ってくださいねっ」
「合言葉は一回しか言いませんよー?『チョコレート雲』!忘れないでね」
にこにこと笑顔で話す双子の絵はそう言うと道を開けた。
ぽっかりとあいた穴に入っていく生徒を笑顔で見ながらティアはきょろきょろと辺りを見渡す。
「ねぇアキラ、今年は1年生が多いね!女の子も多いし楽しみ!」
「そうね。仕事も忘れずにやってね?」
「「まっかせてー」」
「あ、だよ。」
「ショウもいるね!」
呼ばれたと将はばっと絵の前に立った。
「やっぱさっきの絵だよね・・・!?」
「「そうだよー」」
「移動できるの?」
「「できるよー。」」
「さんも風祭君もとりあえず入ってね。またそのうち話はできるから。」
「あ、はいっ」
「わかりました」
「「えー・・・また遊ぼうね、、ショウ。今度は他の人も紹介してねー」」
「うん、わかったー!」
「それじゃあまたね」
ひょい、と穴の中に入っていく2人に笑顔を向けると、西園寺は双子の絵に向き直った。
「じゃあティア、スティル。あとは頼んだわよ。」
「「まっかせてー」」
西園寺が中に入ると、2人は壁の絵を元の位置に戻した。
ポフン、というくぐもった音の後で、2人はまたクスクスと笑い出す。
「楽しくなるね、ティア。」
「もちろんね、スティル。」
辺りを通りかかった霊たちに楽しみね、と笑顔を見せている2人が目撃されるのはこの3秒後。
「それから、向こうが男子寮でこっちが女子寮。男子寮は渋沢君、女子寮は相坂さんがいるから大丈夫ね。
ここの談話室は基本的に24時間使えるけどここで寝ないでちゃんと自分の部屋で寝るように!
それから・・・歓迎会があるから10分後に着替えて集合ね。2人とも頼んだわよ。部屋割りはご自由に。」
ぺらぺらと言うべき事を言い終わると、西園寺は寮から出て行ってしまった。
するとすぐに渋沢が的確な指示を出す。
男子は自分に、女子は相坂についていくように命じるとすぐに自室の方へ向かっていく。
1年生は多少慌てながらもそれに従った。
「じゃあ、またあとで」
「あ、将。また後でね!」
が軽く手を振るのを見届けると、相坂はやんわりと笑う。
もう彼氏ができたのかしら?と軽くおちょくってブランをに返した。
ブランはの周りを飛びながら付いてくる。
学習したのか、その時にはに体当たりを食らわせる事は無かった。
「ここが女子寮。私の部屋は201で・・・そうね、部屋割りはどうしようか・・・」
「私が紅留さんと。有希は彼女とでどうです?」
「そうね、その方が良さそう。・・・にしても遥青。彼女の名前は。よ。」
「ど、どーも。です。よろしく。」
「・・・こちらこそ。私は雪水遥青。これからよろしく。」
「ハイハイ。自己紹介も終わったところで紅留さん!」
「相変わらずね、有希は。じゃ、2人は101号室を使ってね。中に有る制服に着替えて来るように。」
「はい」
「わかりました!」
「じゃ、また後で。」
たた、と数部屋はなれた先にある101号室へ行くとは紅留から手渡された鍵をその鍵穴に差し込んだ。
カチリという音と共にその戸が開く。
有希が中を見て嬉しそうに声を上げた。
「、これよ。これに着替えるの。」
「これが制服?可愛いね!」
「でしょ?そんじょそこらの中学高校よりよっぽど可愛いわ。」
「黒に赤に黄色、この組み合わせもいいと思う!」
「ねー・・・って、だから!急ぐんだってばっ」
「そうでしたっ!」
テーブルの上にキチンと畳まれているそれに手をつけると、袖に手を通した。
なんだか少しくすぐったいような感じ。
はスカートまで終えると、ネクタイに手を伸ばした。
「これ、どーやるの・・・?」
「、知らないの?」
「うん。」
「やったげるわ。」
言われるままに有希にネクタイを渡すと、ひょいひょいと彼女はの前で三角形を作る。
おぉ、とされるがままになっているは有希の手が止まったのを見てそれを掴んだ。
「すごいねー、うん。有希すごいよ!」
「兄貴がここで働いてるの。兄貴のネクタイとかやった事あるから。」
「それでもすごいと思・・・」
コンコン
「う?」
「早くしないと遅れますよー」
「すぐ行くわ遥青っ!」
「え?もう時間!?」
バタバタと用意を済ませて戸を開けると、置いてくる予定だったブランが部屋から飛び出してきた。
そういえば、ブランは学校のフクロウでずっと一緒にいるわけではないんだ。
何となく、これからもずっと一緒のような気がしていた。
そんな事を思っているのはきっと、自分だけだと思うけれど。
「あ、ー!」
「誠二!誠二赤色似合うね」
「まあね、情熱の赤だしさ。」
「それ言われると似合わないような気も・・・」
「えぇ!?」
「しないって事にしておいてあげよう!」
「ー・・・」
大広間に着くと、そこにはまだ他の寮の人はいなかった。
しかしテーブルの上にはすごい量の料理が並べられている。
一目見てこれは魔法で用意したんだという予想がつく。
すべてができたてのようにセットされていたからだ。
一瞬でこんな事ができるのは魔法くらいだろう。
「多いねー・・・料理。」
「そうか?そんな事無いと思うけど?」
「え・・・誠二それ食べすぎなんじゃない?」
「んなこと無いって!」
と、スリザリンの生徒が集まり始める。
レイブンクロー生がなかなか来なかったが、少し待つと慌てた様子で入ってきた。
ここを一番最後に出たのはレイブンクローだったのだから仕方ないね、とタクが前で言う。
それに肯定の返事を返す・・・と、その時前に立っていた西園寺が手を鳴らした。
辺りは静まり、グラスの口が上に向けられる。
新入生が驚くのもつかの間、すぐに次の魔法が繰り広げられていた。
グラスに自然とジュースが注がれる。
オレンジ・アップル・グレープ、適当に注がれているのだろうが見ていてとても楽しい。
西園寺は高々とグラスを掲げると、大きな声で言った。
「では、乾杯!」
西園寺さんの言葉に、誠二がすぐにがっついた。
目の前にある料理がドンドンと無くなっていく。
竹巳は溜息をついてそれを止める為にグラスを放り投げた。
「むぁっ!?」
右手を伸ばしてそれを取ると、誠二は竹巳に反論する。
「タクっ!俺1人ならまだしもこっちがいるんだからさ!当たったら危ないじゃんか!」
「大丈夫。に当たるようには投げてないから。」
「そう言う問題じゃないって!ねぇ!」
「や、当たらないなー・・・って思ってたし。誠二を止める有効手段がこれなんだろうと。」
「そうなんだよ。食べてる途中の誠二を止めるのは難しくてね。こうして物を放るしかないんだ。」
「そうね。三上もそう言ってたわ。」
「そうですね、マグル校でもそんなでしたね。」
反論する・・・が。
だけでなく紅留や遥青までが竹巳の味方に回ってしまったため、がっくりと項垂れた。
「まぁ見てて面白いからいいけどね。」
「そう言う問題でもない気がしますが。」
「遥青は細かい事気にしすぎ。ちゃん、共にがんばりましょう!」
「はいっ、紅留さん!」
「それもなんか違うと思うんですけど相坂先輩、・・・」
「止まりませんよ、きっと。」
「遥青は諦め早すぎ。」
「有希、いたんですか。」
「うん。に水野とか名前教えてなかったから教えようと思って・・・っていたって!ずっといたって!」
「っていうか何でこんな状態に・・・」
「誠二ー・・・」
わいわいがやがやと賑わってきたグリフィンドール寮のテーブル。
2年生軍団は面白おかしい自寮の後輩たちを苦笑しつつも温かい目で見ていた。
そこに静かなる台風の目が飛び込んでくるのはすぐ後の事。
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