グリフィンドール!そう叫んだ元気な帽子と対照的にそれを被っていた女の子は呆然としていた。
前のほうを見ると、赤、青、緑の旗のようなものがあって、そこのテーブル周りに5,6人の人が座っていた。
長椅子と、長テーブル、それなのにたった5,6人の生徒とは、ほんの少し寂しい。
夏樹莢と呼ばれた少女はグリフィンドールだと思われる赤い旗のテーブルで祝福を受けている。
それを見たはいいなぁ、と思った。
「さん!」
そう呼ばれて、私は手持ち無沙汰のまま仕方無しに前へ歩み出た。
私が何も持っていないことに気が付いた玲さんは何かを言いかけたけれど、呆れたような顔をしてお決まりのセリフを言う。
「入学おめでとう。」
「ありがとうございます。」
私はにこ、と笑うとその帽子を手に取った。
髪を後ろにかけなおすとそれを被る。
すると頭の奥底から私に話し掛けてくるような声が聞こえる。
「(・・・君は)」
「(どうもこんにちは)」
「(君を知っているよ、君は確か・・・)」
「(はい、でもそれは内緒ですよ)」
「(・・・そうだな。君はどちらかな?)」
「どちらって・・・?」
この帽子はきっと笑顔で言った言葉のはずなのに、何故かすごく重い気がした。
はその時そう感じたが、それを口に出す気などさらさら無かった。
ましてや、この帽子にそれを話すことなんて。
「(うむ、決まりだな)レイブンクロー!」
「(・・・頭、良くないのに。)」
帽子を椅子に下ろすと、どうも。と言って青色の旗の方に向かう。
の名前が呼ばれたときも、他の人のときと違わずわぁっと歓声が上がった。
そのテーブルに向かうと、そこには見慣れた姿があって、は思わずその人物を指差した。
「え?・・・シゲくん!?・・・よくレイブンクローに入れたね・・・!!」
「阿呆っ!俺は勉強家やで?」
「・・・・・・・・・うん」
「何やその間は!?」
まるで漫才のようだ、と同じ2年生の山口圭介と横山平馬は思った。
山口は苦笑して新入生と級友の漫才を見る。
横山は他の1年生と友好的に話をしていた。
「へぇ、じゃ、横山先輩はハーフなんですか!」
「うん」
「俺、マグルなんです」
「へぇ」
・・・・友好的に?
「ちゅうか君ら話聞いてへんけどエエの?」
「良くないんですよ」
「!裏切りおって・・・」
と、隣から話に加わった一人の少年の言葉にはコロリと態度をかえた。
口元に1つほくろの有るその少年はをみてにっこりと笑む。
(この人、もてそうな気がする)
もにっこりと笑んでその少年を見る。
「どうも初めまして。です。聞いてのとおりシゲくんの知り合いです。」
「ボクは吉田光徳。藤村の良きパートナーや。よろしゅうな。」
周りに花が見える・・・。
目でも悪くなったかしら?と言いたくなるのを抑えて、もよろしくお願いしますと返答を返した。
するとそこにもう1人の2年生が姿を表した。
赤茶の髪に周りに比べると少し低めの身長、そして。
「ほら、他の1年生をもっと祝福できないわけ?」
ちょっぴり毒舌、と言えば。
「つばささん」
「も、早くその辺に座って前の話聞いて。」
「え?は、はい。」
「とりあえず1年生の組み分けが全部終わって1段落ついたら全員自己紹介するから。」
「わかりました。」
次々と呼ばれる名前に、柾輝の名前も畑の名前もあった。
柾輝は同じレイブンクロー、畑六助はスリザリンに分けられた。
すぐにと翼の近くに来ると、に鞄を返し、近くに腰掛ける。
そこで2,3会話を交わして落ち着いた次の瞬間、がむせた。
「棚谷杳さん!」
「ぶはっ!?」
そのむせ方に周りの生徒が驚く。
先ほどまでに呼ばれてこの寮に入ってきた天城と桜庭、阿部、それから上原が驚いてを見た。
はなんでもないんですごめんなさい!と言うと前のステージの上の人物に目をやった。
「レイブンクロー!」
「・・・杳さんまで此処に来るなんて・・・」
あぁ、とは頬杖をついた。
魔法使いの学校なのに何故か知っている人物が多い。
杳も前の学校が同じなのだ。
その呟きを聞き取ったのか翼がに溜息をつきつつ言う。
「去年人数が少なくて授業にならなかったから今年は少しでも素質がありそうなやつ片っ端から集めてるらしいよ」
それこそ知り合い中心にね、とは心の中で付け足す。
なんだってこんなに自分の知り合いが多いんだろうと思いながら、歩いてくる杳に目を向けた。
真っ黒とはいえない短めの髪に少し短めのスカート。
同い年なのに自分よりも数倍しっかりとした存在。の頼れる友達だ。
杳はを目で確認すると真っ直ぐそこに向かって歩いた。
「!良かった。知ってる人がいて。・・・柾輝も翼さんもお久しぶりで。」
「よ、杳。」
「杳まで玲に呼ばれてたとは思わなかったな」
「玲さんがこんなに偉い人だなんて知らなかったー、ねぇ?」
「知ってたよ?って、そんな事はどうでも良くて。知ってる人多すぎ・・・」
どうでも良くないと思うよ?という杳の言葉はあっさりとにスルーされた。
杳が呼ばれて少し。
レイブンクローには日生、不破が入った。
名前を全員分覚えるのにはあまり時間がかかりそうに無いとは思う。
先輩が6人、同学年は9人。しかもその内何人かは知り合いだ。
かなり楽ではないだろうか。
「では最後です!高原鏡さん!」
「はいっ」
呼ばれて数秒、帽子は1言2言会話をしただけですぐに鏡と呼ばれた少女の寮を決めた。
鏡と呼ばれた少女は、どこか困ったように何かを口にしていた。
それが、何故か、引っかかったような気がした。
「スリザリン!」
スリザリンの寮が一斉に歓声を上げた。
そうして新入生全員の寮が決まった。
西園寺が手をパンパンと鳴らすと騒がしかったこの部屋が一気に静まり返る。
では校長先生のお話にうつりたいと思います。
という言葉を皮切りに、先輩たちの不満そうな微かなブーイングが聞こえた。
その理由を知るのは、すぐ後。
魔法使いの子供、人間の子供、その間に生まれた子供。
みんながみんな、育った環境も違えば人間性も違う。
同じなのは、子供たちがこれから学んでいくコト。
back
top
next