出てきたハゲの嫌味そうな人を見て、は一言呟いた。


「誰?」


・・・と。

























目をパチクリとさせると、の向かいに座っていた上原が知らないのか?とその顔を見た。
それに肯定の意で頷くと、上原は口元を引きつらせながら前のハゲを見て言う。


「あれ、校長なんだけどさ」

「優秀な生徒を集め、育成するのが我々の目的で・・・」

「噂によると、話し長いわ煩いわハゲだわ役に立たないわでヒデー校長らしいぜ?」
「・・・この挨拶を聞いて私もそう思った・・・何でこの人が校長・・・」


苦笑して上原に返すと、だろ?と上原が口元を歪ませた。
それから、はっ、とは気が付く。


「えと、ごめん。名前教えてもらえる?イマサラだけど」
「あ、俺上原淳。そっちはさんだよね。」
「うん。でいいよ?」
「マジ?じゃ、俺は淳でいい。よろしく、。」
「あはは、淳くんでもいいですか?」
「もちろんOK。がそれでいいなら。」


何気に話を聞いていないのだが、校長はそんな事はどうでもいいらしい。
むしろ生徒の反応など気にしていないようなのだが。
そんなときにも被害をこうむるのは柾輝+1、杳だ。
何気に不機嫌。
その原因はわかっているものの、止める事が出来ないのが現状。
いくら生徒の事を気にかけていないとはいえ騒がしくすればそれなりに怒られるだろう。
入学初日からそれは嫌だ。
そんな退屈で窮屈な時間も終わり、西園寺はまたその手を鳴らした。


「では寮に案内します!グリフィンドールは私。
 レイブンクローは松下先生、スリザリンは榊先生が寮監督です。各先生の指示に従って動いてください!」


そう言うとすぐにテーブルの先頭に男の先生が現れた。
あの人が松下さんかな?とはその人物を見た。
グリフィンドール、スリザリンが扉から出て行くと、やっとその人物は口を開く。


「んじゃ、ま。とりあえず行こうか。」


扉を出て動く階段に新入生が心弾ませている間に、その人物は自己紹介をしていた。


「もう分かったと思うが俺が松下だ。授業はホウキ飛行訓練担当、よろしくな」


ホウキ飛行訓練とかあるんだ、と動く階段を見ながらは思った。
・・・落ちたら死ぬのだろうか・・・。
苦笑いをしながらはついた場所で首をかしげた。
刀を持った侍がそこには描かれている。かなり大きなものだ。隣で杳が絵だよね?とに問う。
その問いに、そうだと思うけど、と返すと松下はその絵に話し掛けた。


「よ。」
「松下殿か、新入生だな?なんと多い・・・」
「はは。これから頼むぞ疾風。」
「は」


疾風、と呼ばれた侍は絵の中で丁寧に礼を返した。
それにまた新入生は驚く。
だが驚きはそれくらいで終わりなどしなかった。


「では松下殿、合言葉を。」
「あぁ、皆よく聞いとけよ、合言葉は『言うが容易き、するは苦になる』だ」
「ではお通り下され」
「よし、じゃ入れよー」


なんてすごい合言葉だろうか。がおいおいと思うのもつかの間、侍の言葉に目を瞬かせる。
その絵が横にスライドするとそこにはぽっかりと穴が現れた。
3年生を筆頭に、次々とその穴の中に入る。
するとそこには大きな空間があった。
松下は1つ1つ丁寧に説明する。
今全員が集まっているこの大きな部屋は談話室。
入って右の階段を上ると男子の寮、左を登ると女子の寮があるらしい。
今から自分の部屋に行って、10分後、制服に着替えて集合だそうだ。
今日はこの後1年生の歓迎会があるらしい。
全員部屋割りを渡されて、わいわいとその部屋に向かっていく。
は、当然と言えば当然、杳と同室だった。


「んじゃ、ちゃっちゃと着替えちゃいますか?」
「ですね」


渡された紙の部屋番号は101だった。
それはすぐに見つかって、そこに2人が足を踏み入れると左右対称になっているベッドや机がきっちりと置いてあった。
ベッドのシーツはぴんと張られていて、机の上にはきちんと畳まれた制服が一式。
お互いに別々の机に向かうと、すぐに制服に着替え始めた。
机の下に鞄を押し込む。・・・と、は昨日持ち込んであったトランクがちゃんとこの部屋に移されている事に驚いた。
昨日の時点ではまだ自分の入る寮は分からなかったし朝の時点ではまだあの部屋にこのトランクはあった。
(行動早いよ玲さん!)
杳も自身のトランクは無事に部屋についていたようで、それを確認するとよし!と声を上げた。
スカートをはいて、ネクタイを締めた。
カラーはブルー。
そういえば此処の寮の旗の色は青色だった、とは思った。


このネクタイ似合うね」
「ありがと、杳さんも似合ってるよ」
「お世辞は結構。じゃ、行こうか」


お世辞じゃないのに、というの言葉も聞かず、杳はルームキーを手の上で転がした。
部屋から出て杳が鍵をかうと2人してそこから談話室へ向かった。
談話室ではもう8割がたの生徒が集まってきている。
スカートをはいて出てきた2人に、少年たちは少し顔を赤くした。


、杳!よう来てくれたな!」
「シゲさん久しぶり!よう来てくれたって・・・なんで?」
「ここだけ去年女子おらんかってんな。今年は入ってくれてよかったわ」
「あー、そういうことですか。」


その時間をいともあっさりと壊して、シゲが2人に歩み寄った。
と、そこに翼が階段から降りてきた。


「揃ったね?っていうか時間だからいないヤツは置いて行くよ。着いて来て!」


その翼の言葉にはん?と首を傾げる。
なんだかすごく偉そうだ・・・いつもかも知れないが。


「姫ぃさんはここの監督生なんや。ほら、行くで。」
「監督生って・・・つばささんすごいんですね。シゲくんとは大違いだ」
はいつも1言余計やな」
「そんなことないと思いますけど?私正直な事しか言えないので。」
・・・」


ガックリと項垂れたシゲと揃って部屋を出ながら私は後ろを振り返った。
杳さんは淳と一緒に来てる。何時の間に仲良くなったんだろう?
まぁいいんだけどね、と前を見て扉をくぐった。
赤と青、緑の旗の下のテーブルには驚くほどの料理が並んでいる。
・・・こんなに、食べきれるのかな?


「こりゃまた少ない量やな」
「えぇ・・・!?」


こ、こんなにあるのに?と言う言葉を飲み込む。
テーブルの前にはもう各寮の人たちが大体いて、私達が最後の方だって気がついたからだ。
わたわたとレイブンクローの寮生が席につくと、それを待っていたと思われる玲さんがパンパンと手を叩いた。
すると今まで何も入っていなかったグラスにジュースが勝手に注がれて、料理も心なしか(いや絶対)増えた。
多い、多いよ玲さん!この人数にこの量は多いって!
なんて言う私の心の中もサラリと(当たり前だけど)スルーして玲さんは1つのグラスを上に掲げた。


「では、乾杯!」


わぁ、と上がった歓声に、思わず顔がほころんだ。

こういうのも悪くないな、と頭のどこかで響いた気がした。



楽しいと思う感情を必死に抑えて生きてきた。
それなのにこの世界は私にそれを教えようとする。
どうやったら私はここから逃げ出せる?
そんな事を今でも思ってしまうのは、私が弱いから?






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