「それじゃ、行ってらっしゃい。」
にしし、と笑う妹を見て、は笑んだ。
母親はトランクをにおしつけると腰に手を当てて笑った。
「早く行かないと遅刻よ!」
「はっはっはっはっはー、まだ余裕なんだよ!!」
「、いやもう行った方がいいから!」
またおかしくなる前に!、と付け足す妹に何も言い返すことも出来ず、はしぶしぶ立ち上がった。
「行ってきます!」
秋晴れの空が、誰の上にも均等の光を分け与えていた。
その空を少し眩しいと感じながらもはその一歩を踏み出した。
地図を見つめながら、そこに指定された場所へと足を進めた。
先ほどと同じようにまた空を見上げて少し眩しいと感じながら、それでもその空に笑顔を見せる。
1歩1歩足を進めて、その足をとめた。
この辺りだと思うけど、とそんな事を思わなくてもこれは良く分かるよな。
少し広い空き地に、同じくらいの年頃の男の子に、トランク。
こりゃもう同じ所に行くと考えていいだろ。
「結人のヤツ、遅いな・・・」
「一馬、結人が遅れるなんていつものことでしょ」
「そうだけど」
ざざ、と坂を滑って降りると少年2人は少し驚いたような顔をして、それからを見た。
黒髪短髪の少年が自分を見て口を開く。
「君もホグワーツに行くんでしょ?」
「そう。君達も?」
見た感じではとても冷めた感じの印象を受ける黒髪の少年達。
思いもがけずその場にいた少年が話し掛けてきたのには顔を緩めた。
(悪いヤツじゃなさそうだ)
こうやって最初の印象がいいとこの先もはその人間を大事にする。
は何よりも第一印象を大切にする人間だった。
そしてここからこっそりと1つの“ゲーム”を始める。
「君はマグル?」
「んや?俺はハーフ。そっちは?」
「俺達は2人とも魔法使い。そういえば自己紹介してなかったね、俺は郭英士。」
「あ、俺は・・・真田一馬。」
「そうだったな、俺は。よろしく。」
(・・・?)
いやに女の子のような名前だ、と英士は思った。
しかし着ている服は男物だし、髪の長さも自分たちより少し長いかと言うくらい。
顔は・・・どちらともいえないが。
(それに『俺』って言ったし、男でしょ)
先ほどの質問には1人称を確かめる意味合いもあったのだが、相手は何の躊躇いもなしにさらりと『俺』という言葉を使った。
その声はどちらとも判断しがたいものであったが。
多分、いやきっと。あっているだろう。
「、でいい?」
「もちろん。俺も呼び捨てでいいのかな。」
「あ、あぁ。・・・は誰かと待ち合わせでもしてるのか?」
「いや、そんな事は無いよ。そう言う2人は?」
「連れを待ってるんだよ。そいつは・・・―――――」
英士がそこまでを言ったとき、遠くの方からおーいという声が聞こえてきた。
それに気が付いた一馬は辺りを見渡す。
先ほどが滑り降りてきた坂から、茶髪の少年が1人と、黒髪短髪の少女が転がり落ちてきた。
「えーし!かずまー!!って、おうあっ!?」
「ううぁっ!?」
「ゆ、結人!?」
一馬が慌てたように少年に駆け寄る。
英士は被害を被らないようにと少し身を引いていた。
はとりあえず少女の方に寄ると、トランクを引き起こして声をかけた。
「えーと・・・大丈夫か?」
「ったー・・・!あ、どもども。ありがと。」
「大丈夫そうだな。」
「うん、平気。」
少女はパンパンと付いた砂を払うとトランクに手をかけた。
そして茶髪の少年に顔を向けるとにかっと笑って声をかける。
「ありがと結人!おかげで無事に着いたよ!」
「いやいや、捺大丈夫か?」
はっはっはっはっはー、とお互いに腰に手を当てて笑っている。
その様子を一馬が理解してない事に気が付くと、は英士に疑問をぶつけた。
「英士、質問。」
「何?」
「あのユウトって人は連れだよね。」
「そうだよ」
「じゃ、ナツっていう、あの女の子は?」
「・・・・・さぁ。誰?・・・結人。」
英士は結人に鋭いまなざしをむけつつそう言い放つ。
すると結人は一瞬ぶるっと身震いをすると、ぎぎぎぎと音の出そうなほどぎこちなく顔を英士へ向ける。
一馬の存在を無視するかのように直立不動の体制になると、びしっと敬礼をしてだらだらと冷や汗を流した。
(あぁ・・・そう言う力関係・・・)
はその様子を見守る。
まるで新入隊の兵士とその上官だ。
当事者の捺はトランクを隣にキョロキョロと辺りを見渡している。
「えと、こいつは小島捺で、迷ってて、ホグワーツ行くみたいだったから、その、意気投合で、来た。」
「つまり。その人は小島捺サンって言うひとで、俺たちには関係の無い人だけど?
迷っていたから話し掛けたらホグワーツに行くみたいで?意気投合しちゃって此処まで一緒に来たんだ?」
「そ、そういうことで・・・」
「時間に遅れて。連絡もなしに。へぇ。」
「わ、悪かったよ英士!!」
「えーと。ごめん?あたし迷っちゃってさ。まさか友達が待ってるなんて思わなかったから。」
「・・・小島さんだっけ?」
「そう。でも小島って呼ぶの止めてくれる?ホグワーツにはたくさんの小島さんがイマス。」
ふふ、と不敵に笑う小島捺を見て、英士は苦笑した。
・・・というよりもうこれ以上追求する気が起きなくなったというのが正しいのか。
だが一瞬和やかな空気が流れたこの空間を壊す一言を一馬が恐る恐ると口にした。
「あ、あのさ。もう少しで列車、出るんだけど・・・」
「うわ、ホントだ!?あと5分しかない!?」
「早くトランクもって!そこの鉄橋に思いっきり『ぶつかれ』!!」
が時計を確認すると、結人がの手を引っ掴んでその言葉の通り突っ込んでいく。
(ちょ、ちょっと待って!それ魔法ですか?魔法ですか?)
内心素に戻っているのか何なのか。は引かれるままに足を進めた。
英士が捺のトランクを掴んだのを確認したのを最後に、くにゃんとした空間には姿を消した。
捺はその様子を見ると口をパクパクと開けて英士を見る。
「不安なら手でも繋ぐ?」
「・・・いらないよ」
「・・・上等」
そして一馬もするりとその空間に入っていく。
捺と英士がそこに入ったまさにその瞬間、『その場所』からのホグワーツ行きの空間は閉ざされた。
5人が消えたその鉄橋に猫が寄り添って眠っている。
幸い、5人が消えたのを見ていたマグルはいなかった。
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