列車に乗り込んで、はぁと息をつく。
5人で乗ったコンパートメントは少し狭かったけれど列車全体を見ればずいぶんと空いていた。
全員トランクは乗り込むときに預けてしまったので今あるのは手持ちの小さい鞄だけだ。
息を切らして走った割には余裕で乗れたような気がしないでもないが、まぁいいだろう。
がふと前を見ると、先ほどの少女とパッチリ目が合った。
黒髪に、赤い瞳だ。
は思わず綺麗な目の色だね、と呟いていた。
「お、お前っ、俺よりタラシだろ!?」
「はぁ?」
何でそんなこといわれる必要がある?と茶髪に言いかけるが、危ない危ない。
そうだった。ゲームの途中だった。
は崩れた顔を戻すと捺と顔を見合わせてにこっと微笑んだ。
「ありがと。えっと・・・名前わかんないんだけど。」
「あぁ、俺は。」
「俺は郭英士。」
「お、おれは真田一馬」
「俺はさっきも名乗ったけど若菜結人。もホグワーツ行くんだな!」
「乗ってるんだから当然でしょ」
まだ少しピリピリした雰囲気の英士に、結人は少したじろぎながらも元気に話し掛ける。
座っている順番は、窓際から、英士、一馬の順。
その向かいにはやっぱり窓際から捺、結人が座っている。
捺は軽く髪を整えるとじいっとを見た。
(なんでこんなに見られてるんだろう)
は疑問に思いながらもそれを口に出す事はせず、居心地悪げに外に目をやった。
・・・ものすごい速さで走っている気がする。
「ね、だっけ?その髪の色も綺麗だと思うよ?」
「コレ?染めたんだよ。」
「私の瞳だってカラコンだしいいじゃない。綺麗綺麗」
にしし、と笑う捺を見て、それが一瞬自分の妹とダブる。
は軽く頭を振ると苦笑いを口に浮かべた。
(ってことはこのコには弱いのか・・・?俺。)
それを見ていた英士が不意に口を開いた。
「捺はハーフ?マグル?」
「あたしはクォーターだと思う。魔法使いの血は薄いよ。」
「くぉーたー?」
それに捺が答えると、結人が頭の上にはてなを飛ばした。
一馬がそれを説明してるのを確認すると、は英士に顔を向ける。
「なぁ、なんでさっきからソレ確認してんの?」
「クィディッチを知ってるか確かめようと思って。」
「クィディッチ?」
の問いかけに英士はふ、と笑んだ。
捺はクィディッチ?と首をかしげた。
しかしそれは「何それ?」と言う意味ではなく、「何でそんなの聞くの?」といいたげだ。
は母親の読んでいた雑誌を思い出していた。
(あぁ、あのスポーツ・・・。)
ルールは聞いたけれどもちろんやった事は無い。
箒に乗ってボールを投げあうスポーツで、確か。
「そう。スニッチを捕まえれば勝ちも同然のあのクィディッチ。」
「あはは。魔法使いじゃなくても知ってるかもよ?あたしでも知ってるんだよ?」
捺がからからと笑うと、英士はそう?とその顔をに向けた。
なんとなくね?とが答えると、英士がそれはよかったと顔を綻ばせた。
(なんだ、ちゃんと笑うんじゃない)
思わずそれが口をつきそうになったが、それは口に出さずには座りなおす。
いつもからすると慣れないシャツがどうにも不思議だ。
・・・と、茶髪の少年が(結人、だったか)じぃっと自分を注目しているのに気が付いた。
が「ん?」と顔をその方向に向けると、結人はぱぁ、と笑った。
「クィディッチ、やったことあるか?」
「いや、無いよ。俺はずっとマグルの世界にいたから。」
「なんで?」
「いや、母さんも魔法使いだけど育てられたのはマグルの世界だし・・・」
「マジ!?じゃーさ、学校についたらやろうぜ!クィディッチ!!な、一馬。」
「あぁ。ホント楽しいんだ!」
「何?一馬楽しそうだね」
「一馬はクィディッチ上手いんだぜー?俺には敵わないけどサ」
「な、何言ってんだよ結人!」
わいわいとクィディッチのトークで盛り上がり始めた5人。
がたごとと揺れる列車の中で話はどんどん弾んでいく。
「はは、あぁ。笑ったー」
「着いたらさ、とは絶対クィディッチできそうだな!運動神経よさそうだしさ!」
「何で俺だけ?」
「だって捺は女だろ?」
「女でもクィディッチは出来るはずだけど?」
「そうだよ結人。クィディッチに性別は関係ないでしょ」
「上手ければ誰でも選手になれるはずだぜ?」
結人の言葉に、捺、英士、一馬は反論をする。
捺はもうすっかりと仲良くなったからかぺしっと結人の頭を叩く。
これ以上バカになったら困るから止めておいた方がいいよと英士が言う。
違いないね!とコンパートメント中が笑いの渦に包まれた。
それとは別の意味で、は心の中で静かに笑んだ。
(よし。ゲーム続行)
向かい合っている席で、捺は3人に気が付かれない様にを伺い見た。
はそれに気がつくと視線を合わせる。
何?と言う目で捺を見ながらも会話は続いていた。
「はは。あー・・・あ!ガッコ見えてきたぜ?」
「どこだ?結人。」
「あそこに見えるでしょ一馬」
大きな曲道を列車は進んでいく。
森のように暗い道の奥に大きな城のような建物が見えた。
それにわー、と驚きながら捺はひょいとの近くに顔を寄せた。
「ね、女の子だよね?」
「へっ?」
「・・・ホラ、声。」
「・・・なんで分かった?」
「何となく。」
ぼそぼそと小声で話す2人。
それに気がついた結人はそこにわって入った。
「なーに2人でコソコソ話してんだよ!せっかく仲良くなったんだから皆で話そうぜー♪」
「あ、おう。な、捺。言うなよ?」
「まっかしてー!」
「何話してたんだ?」
「内緒」
「なんでだよー!だいた」
「それはそうと・・・近くなってきたね」
念のため説明しておくと、結人の言葉が遮られたのは英士の言葉と行動によって、だ。
薄暗かった道がだんだんと明るくなってきた。
トンネルを抜けるとその列車はすぐに停車する。
列車から降りると、割と多い人物が乗っていた事を知る。
割と多かったんだね、と話をしていると先生のような人物が前のほうで大声を張り上げていた。
「大きい荷物はもう学校に運んでおいたからー、とりあえず前のボートに乗ってくれ!5人ずつだから頼むぜ!」
すると前のほうの人が流れていく。
ボートに乗ると、10分ほどで離れ小島に着く。
そこから降りて改めてその『学校』を見上げた5人は口々に呟いた。
「でか」
「これが学校・・・」
「世界遺産にでも認定しろよ」
「それはどうかと思うけどね、結人」
「ってかどの辺がどう学校・・・?」
思わず立ち止まった5人を後ろから明るめの(先ほど叫んでいた)人物がさぁさぁと押す。
「ホグワーツ魔法魔術学校日本校へようこそ!ってことで、時間押してるから中に入って入って」
「わ、は、はい」
5人が入って暫く。おそらく全員が入り終わってからだろうが、ドアが閉まった。
蝋燭の光が舞っている。・・・ついでにお化けも舞っている。
(すご・・・)
がそう思うのと同時に前のほうにいる女性が杖を振るったのが視界に入った。
ぐにゃぐにゃという感覚がして、思わず目を瞑った。
(なんだ・・・?)
そして、目を開けるとそこは先ほどまでと立っている場所が違った。
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