「まさかが女だったとは・・・っ!!」
「驚いた・・・」
「そこまで驚かれても困るんだけど」


寮ごとに移動して、その席に座って1息つくといきなり突っ伏していた結人ががばぁっと顔を上げて言った。
一馬もそれに頷いてを見る。
は捺と顔を見合わせてくすっと笑むと、先ほどまでとは全く別の声で話した。
それにまた2人は驚く。
英士が「捺は最初から分かってたの?」と聞くと捺は「列車の中でね」と答えた。
今の服装はホグワーツ指定の制服。
と捺はスカートをはいている。
先ほどまでとはまるっきり違うに、3人はどう接していいかわからないようだった。
それに捺は溜息をつく。


「ってかさ、男女差別すんのやめてよね」
「してねーよ!」
「ちょっと戸惑ってるだけだよ。」
「んじゃ成功だね。わたしのドッキリは。」
「っく・・・!」


結人は大げさに、そして悔しそうに一馬に八つ当たりした。
うわぁぁ!という一馬の断末魔に・・・否。
一馬が結人にやられていても英士は顔色一つ変えないで「それにしても。」と呟く。
それに捺は、ん?と顔を英士に向けた。





























「声とか変えられるの便利だね」
「声も1人称も変えるのは自由自在だよ。」
「変装に便利だね!」
「なんで変装する必要があるの・・・?」


スリザリンのメンバーはグリフィンドールの次にテーブルに着いた。
レイブンクローはまだ席についていない。
やっとパラパラと何人かが席に着き始めたところだ。
グリフィンドールは待ち疲れたようで多少不機嫌だった。
捺と英士はグリフィンドール側を向いているのでそれがよく分かる。
捺はレイブンクロー側へ向かう1人の女子生徒を見て首をかしげた。
は慌てて席につくレイブンクロー生を見ながら女子の少なさに驚いていた。
グリフィンドールは多かったのになぁ、と思いながら目の前に並んでいる料理に目をやった。
自分の前にはカラのグラスが置いてある。
そして料理を指差しながら英士の方に向かって質問を投げかけた。
しかしそこから帰ってきたのは別の声で。


「これって魔法?」
「そうだね。一定時間で元に戻るように魔法がかけてあるんだよ。」
「え?」


見知らぬ声に、ふ、とが顔を上げるとそこにいたのは先ほどの2人。
李潤慶と、鷹澄と呼ばれていた女子生徒。
の問いに答えたのは潤慶の方で、はその明るく、薄いオレンジ色の髪を揺らして彼を見上げた。
鷹澄が当然とでも言うようにの隣に座る。
何でこんな綺麗な人ばっかりが自分の周りに居るのか、とは口元をゆがめた。
そう思うのも無理は無い。
カラコンをしてはいるが綺麗で目立つ、カッコいい部類に入ってもおかしくは無いが捺がいて、
顔は似ているがおそらく性格は別なのであろう美麗と言う言葉が似合ういとこ同士の英士と潤慶がいて。
それから黒髪長髪の東洋の美女と呼ぶに相応しい鷹澄という先輩も居る。
結人と一馬も整った顔立ちだが、どちらかと言うとカッコいい部類に入ってしまうだろう。
とにかく、顔がいいのが揃いすぎでしょ?とは溜息をついた。
・・・もちろん、も十分美麗なのだが。
と、その時前に立っていた西園寺が手を鳴らした。
するとグラスに自然とジュースが注がれる。
西園寺は高々とグラスを掲げると、大きな声で言った。


「では、乾杯!」

























もぐ、と目の前にあった料理を適当にとって口に運ぶとの口からは感嘆の息が漏れた。


「うまっ!?」
「あたりまえじゃん。コレも美味しいよ?」
「あ、食べるっ!」
食い意地張りすぎ。」
「結人に言われたくねーよっ!」


捺が紹介する料理を食べるたびにはへぇ!と顔を輝かせた。
鷹澄と潤慶は保護者のような目でそれを見ている。
結人がそれに茶々を入れると、は幾分列車の中の言葉に戻ったようでそう答えた。
少し落ち着いてきた頃を見計らって潤慶が自己紹介しようか!と全員に言う。
須釜がそれに賛成すると、鷹澄は異議アリと潤慶に手を上げた。


「えぇ!?」
「はい、やひゆ!」
「全員への自己紹介は後でやればいいじゃない?今はその辺で交流って言うのに時間使わない?
 去年は単なる寮内紹介って感じだったけどそれじゃ面白くも何とも無いでしょう?
 自分から周りに話し掛けたりして会話が弾めばそれでいいじゃない。・・・っていうか基本的に須釜に反対。」


1年生の誰かが驚きの声を上げたがそれを無視してやひゆ・・・―――もとい鷹澄は潤慶の許可を得てそう話した。
初めの方は十分理にかなっているが、一番最後に呟くように言った一言もしっかりと周りには聞こえていた。
おいおいと思う1年生もこれで「須釜」という人物が誰か分かったに違いない。
そう英士は思った。
潤慶は少し考えた後、じゃやひゆの言うとおりにしようか!と笑顔で言う。
その後で、「でもとりあえず」と自分とやひゆ。つまり寮長と副寮長の簡単な紹介だけは済ませたが。
わいわいと賑わうスリザリンのテーブル。
は結人と一馬とクィディッチの話をしながら、ふぅんと料理にぱくついた。


「ルール・・・あぁ。なんか女子をチームに1人は入れるって言うのがルールに新しく加わったんだ。」
「女子を?」
「そう。女子もクィディッチが楽しめるように、ってさ。チームの選抜は松下・・・あぁ、レイブンクローの寮監がやるんだけど。」
「だからか捺、それともタカスミさんが選ばれるってことだよなっ!」
「もしくは全員ね」
「うーわー・・・それは俺らがメンバーに入れる可能性減るからやめてくれー・・・」
「・・・実際のところここの寮は誰が強いの?」
「潤はもちろんだろ?あとは須釜に功刀。」
「ふーん・・・で、入れる自信は?」
「あるに決まってるだろ!」


笑いながら料理を平らげていく。
確かに食べているはずなのに減っている様子が無い。
ついでに言うと食べてる気もしない。
味はするのに、おなかがいっぱいと言うことが分からない感じだ。
は結人と一馬に料理の名前を聞きながら、そう思った。


























「見間違いじゃなかった」


そう呟いた捺が、信じられないと言わんばかりに顔を歪めているのをみて英士は持っていたグラスを置くとその顔を覗き込んだ。


「何が?」


捺は不思議そうな、そして怪訝そうな目をしている英士に、少し悩んだようにして、一言。


「後でこっそり話す。」
「・・・?分かった。」


英士が前に顔をやると前方では手を繋いだ男女がグリフィンドールのテーブルへと向かっているのが見えた。
それがどうかしたのかと首をかしげて、英士はまた一口グラス内のジュースを飲んだ。
























スリザリンではもしかして
君はまことの友を得る
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ

























「一馬、こんなんだったよな!」
「確かそんな感じだったと思う。」
「・・・何それ?」
「これは組み分けの時にあの帽子が普通歌うののスリザリンのとこ。今年は時間が無くて歌わなかったみたいだけど。」
「へぇ〜、他のはわかんないの?」
「俺は知らない。一馬は?」
「確か・・・」


グリフィンドールに行くならば
勇気あるものが住う寮
勇猛果敢な騎士道で
他とは違うグリフィンドール

古き賢きレイブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友人を
ここで必ず得るだろう


「こんなんだったと思う。」


そう付け足して、一馬はに紙に書いたその歌を渡した。
はふうんと呟いてその紙をしげしげと見つめる。
結人はカラになったグラスを口にくわえて上下に動かした。


ってハーフなんだろ?こーゆーのやんなかった?」
「あー・・・うちって特殊だったから」
「特殊?」
「そ。まぁそれも・・・―――――――――――――」


結人が質問を投げかけてそれにが答えようとしたとき、突然ステージ上から声がした。


「ではそろそろお開きにしましょうか!」


その声には話すのを止める。


「また今度ね」
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「ゆ、結人・・・」


西園寺は全員が大人しくなった事を確認すると今度は寮監督生について寮に戻り、11時には就寝するようにと指示を出した。
それ以降に談話室が騒がしいようであれば減点するとも話した。
点数が年最後の寮の勝ち負けに関わってくる事は全員が知っていたので殆どの生徒が時計を確認した。
9時30分、といったところか。


英士と話しながら寮に戻る中で、捺が深刻そうな顔をしているのに気が付いた。


「捺?どうかした?」
「気にしないでー。」
「そうもいかないでしょ」
「英士は世話焼き伯母さんですか?」
「捺、ふざけるのが過ぎない?」
「ソンナコトナイデス」
「あー、もう。2人の邪魔はしませんよー。好きに話してきなさい」
「「っ!?」」


2人を残して寮に着くと、先についていた先輩たちがもう2次会ムードになっていた。


楽しいよ、楽しい。
楽しすぎて笑ってしまう。
このままこんな幸せが続くといいのに。


は壁に背を預けると下を向いて目を瞑った。





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