一馬を置いて寮に着くと合言葉を言って中に入る。
ひょいっと覗き込むと、は立ったまま静かに寝ていた。
それは一瞬死んでるかと思ってしまうくらい静かで、俺は慌てて肩を揺らす。


「おーい、!?」
「ん、んあ?」


周りはとても騒がしいのに良く寝ていられるものだと思いながら揺らすと、ぱち。とは瞼を開けた。
2,3回首を振るとぼーっとした目で俺を見る。
そして寝ぼけたまま・・・。


「誰?」


そのとき、丁度いいタイミングで英士と一馬、捺が入ってきた。






























「っくっ、ははははっ!!」
「結人・・・っふ・・くくく・・・っ」
「残念だったね、結人・・・覚えてもらえてなくて。」
「うるせー!あー!のセイだぞ!?」
「ごめんって。俺寝起きはダメなんだよ。」


誰?という言葉にその場の3人は笑いを抑えられない。
一馬は必死に笑いをこらえていたが捺の笑いに堪えきれなくなって吹き出しそうになっている。
英士は口元を抑えて結人の肩を叩く。
それに結人が頬を膨らませた。
は苦笑いをしつつ眠気を覚ます為にグラスに入った水を一口飲んだ。


「誰って、誰って酷いだろ!」
「いや、だからゴメンって。」


寮の大テーブルの周りに集まって、殆どの生徒がわいわいと話をしていた。
それぞれのグループに分かれて話をしていると、1人の少年が立ち上がる。
それにつられる様に2人の男女も立ちも同じように立った。


「そろそろ自己紹介でもする?やひゆ!」
「そうね。私たちはもうしたから2年生の他の人からでいいんじゃない?」
「もう1度やりましょうよ〜。その方が確実でしょう?」
「・・・・・・・・・っ!」


「毛嫌いしてるよね。」
「やひゆさんでしょ?潤さん・・・だっけ、あの人もなんで平気な顔して2人の間に立てるのか・・・。」
「潤だから、としかいいようないなー」
「・・・うん」
「潤だから、でしょ」


捺の言葉に、4人が口々に(密かにだが)言葉を交わす。
やひゆは潤の顔を見るとわかったわよ、と言ってストンと座った。
須釜が満足げに微笑むと金の短髪の少年と、仲の良さそうな少年の2人が顔を強張らせた。
よほど権力のある人物らしい。
迷彩帽を被った少年が潤を促すと彼は頷いて手を上げる。


「僕は李潤慶。スリザリンの寮長で・・・ヨンサのイトコ。わからない事があったら何でも聞いて!」
「私は鷹澄やひゆ。さっきも言ったけど副寮長、須釜のこと以外なら何でも相談に乗るから。よろしく。」
「どうも、須釜です〜。クィディッチの話ならいくらでもできますよ。何でも言ってくださいねー」
「功刀一や。クィデッチではキーパーをしちょる。練習ならいくらでも付き合っちゃるけん言いに来い。」
「ワイは井上直樹。他の寮の説明とかしてほしかったらできるで何でも聞いたってな。」
「畑五助。多分この中では1番まともだと思うから・・・よろしく。」


個性派ぞろいの寮だな、とは自己紹介をした上級生を見て呟いた。
それに捺が同意するとお菓子を1つ手に取った。


「じゃ、1年生も自己紹介しようか。じゃ僕から2年を飛ばしつつ右回りに。」


丸テーブルの周りに座っている生徒たちは自分の周りを見た。
潤から右回り、というのを理解するとくるりと視線で順番を確認する。
そして次々と少年達が自己紹介をしていく。
どの1年生も先に話した2年より長めの自己紹介をしているようだ。
自己紹介を右から左に流しつつ、は少年達の顔を見ていた。
どの生徒も緊張よりは期待の方が遥かに大きい感じだ。
(すっごい個性的だよなぁ)
たった今自己紹介中の少年をはまじまじと見ている。
それに気が付いた結人が声をかけた。


「いや、個性的だな、と思って。こいつは名前覚えとこう・・・」
「こいつは、って。全員覚えろよ」
「生憎そんなに脳みそは無いね。興味あることしか覚えられない性質なんで。」
「おいおい。あ、次俺かー」


カタン、と立ち上がると結人は面白おかしく自己紹介をする。
テーブル中が笑いに包まれて盛り上がった。
クィディッチではメンバーを目指すというと俺も、という声が広がった。
結人はどんな人とでも仲良くなれるタイプらしい。
その自己紹介が終わると、今度は自分の番、とも立った。
(あんなに長く、面白くは話せないけどね)
苦笑いをしつつ、とりあえず英士のイトコの寮長の方を向く。


。制服見て気が付いた人もいるかもしれないけど一応オンナ。特技は・・・特技・・・?
 あぁ、声だったら割と自由自在かな。例えば・・・『ちょっと結人いい加減にしなよ』」
「ヨンサだね!」
「英士っ!?」
「今話したのはだよ一馬。」
「あとは・・・『さぁ皆席について』・・・とか?」
「西園寺先生?」
「そっくりですね〜」


は首に手を当てると英士と西園寺の声を出してみせる。
潤慶が楽しそうに笑い、一馬が驚いた。
西園寺の声を出すとすっげー、などと驚きの声がする。
はその様子に満足そうに笑うと、じゃあこんなもんで。と椅子に座った。
捺の自己紹介では何人かがその黒髪赤めに驚き、捺はそれにここの美男子揃いの驚きには負けますけどねと返し笑いをとったし、
英士は潤慶と顔は似てるのに性格が違いすぎると井上直樹から言われてそれは人が違うからともっともな言葉を返した。
一緒にいた5人の中で1番まともな自己紹介をしたのは一馬で、何人かが大変そうだと呟きをもらしていた。
自己紹介が終わるとフリータイムで、捺の周りには本当にコンタクトか?と人が集まった。
グループも少しまばらになって学年での交流が進む。
捺はキョロ、と辺りを見渡して首をかしげる。
それに気が付いた伊賀が口を開いた。


「どうかしたのか?」
「あー・・・がいないなーって思って。」
、って、あぁサンだっけ?」
「そうそう。そう言う君はえーと・・・設楽クンだっけ。」
「あってる。で、なんでサン?」
「え?・・・そうだね。なんでだろ?」
「なんだそれ」
「ま、いいじゃん、そういうこともあるさっ!」
「そうかー?」
「あはは」


彼女は気が付かなかった。
本能的に『何か』を話すべきだと彼女の心が告げていたことに。
きっと、これからも当分、気が付かない。


「あれ、英士。いないんじゃねぇ?」
「そうだね。また飲み物でも取りに行ったんじゃない?」
「あぁ、そっか。・・・飲みすぎじゃ・・・」
「大丈夫でしょ、結人と違って計画性有りそうだし。」
「納得したらしたで結人が怒り・・・結人もいない気が・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

























(どこ行く気だよのヤツ)


慣れた様子で腕をぶらぶらとさせながら階段を上がっていくに見つからないように隠れながら付いていく。
全員の自己紹介が終わった後で何故か。
穴(壁の絵)から出て行くのが見えたから、どこに行くのかと思って着いて来たトコロまではいいけど。
職員室は下だったはず。
どこへ行く気だ・・・?


「あーやっぱ鍵掛かってら。えーと・・・って。着いて来てるヤツ誰?」


ば、ばれてる?


「俺」
「結人・・・!?あぁ・・・もう。見つかるから早くこっち来なよ。」
「お、おう。っつーか何やってんだよもうすぐ消灯の時間に・・・」
「内緒」


は制服のポケットから1つ鍵を取り出すとそれを回した。
かちゃん、と音がしてそれが開くと何のためらいも無しにそこに入っていく。
手招きをして、結人がそこにはいると内側から鍵をかける。
結人は入って見えたその景色に驚いた。


「わ・・・なんだコレ・・・!!」


はその言葉に、満面の笑みを見せた。




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